「『好き。大好き』」
誰もいない空き教室に入って、誰のかも分からない席に座った。
そして誰のためか分からない言葉を呟いた。





害虫






僕の声は誰かに届いたためしがなかった。
――「ウソつき」「気持ち悪い」「信じられない」。

届くのは僕から伝わる過負荷だけだった。
昔からそれが普通で、むしろそれが僕だった。

僕は一方的に誰かが好きで、僕は一方的に誰かを愛して、そして僕はみんなに嫌われる。

なんて不幸せで幸せなんだろう。
僕が僕であることと僕が過負荷であることは同義。
即ち、僕はそれ以外の生き方をするつもりも、できるつもりもなかった。

僕は笑顔と悪意を振りまいて、周りを不幸(マイナス)にするんだろう。

ふぅ、とため息を漏らした。

よくわからないけど、疲れていた。

考えをまとめよう。

僕を理解しようとするものはまず僕に心を折られる。
確かに折ったはずだった。
彼の視力を「なかったことに」するのは僕にとっても彼にとっても決定打となるはずだった。
だがそんな経緯があっても僕に話し掛ける彼を、僕はめだかちゃん以上に恐ろしくてならなかった。

誰のかも分からない机に突っ伏す。

彼は確かにプラスで、僕とは違うはずなのに、なぜだか彼に惹かれずにいられない。
最初は「めだかちゃんのもの」という意識が僕にそうさせるのかと思っていた。それが僕の悪癖(マイナス)だから。

だけどそれは違う、と気付いた。
彼はよくも悪くも普通で、僕にも普通で。
大好きなんだ。
中間の彼が。僕にも彼女にもない、本当の普通。

だけど。

「『過負荷に好かれるなんてかわいそうに』」
僕はそう呟いた。
「『僕の為にも死んでくれないかな』」

また、つぶやく。

僕が心静かにいつも通り括弧つけて生きていけるように。
「大嘘憑き」が無くなったから思えること。


「『君がいなくなってくれたらいいのに』」
大好きだから、死んでくれたら嬉しいのに、なんて。
やっぱり僕は過負荷で最低だけど、短い間だけど副会長として君たちと一緒に居させてほしい。
こんな害虫みたいな僕でも。


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