16.視線の先には何があるのか
57/58

『ここのジムは炎タイプを扱っているんだ。つまりはそう、ボクの出番なワケだよ結鈴ちゃん!!』
と力強く語るはメンバーでも特にバトル狂な皐月である。出会った時のようなハイテンションっぷりに若干引きはしたものの、言ってる事はただしいのでソウデスネと同意しておく。
「他に参戦希望の方はいませんか?…特にないようでしたら基本は皐月にお任せします」
『ふふふ楽しみーーー』
というのがジム戦前にした会話である。当の本人はジムトレーナーとの戦闘で傷一つ負うこともなく、嬉々として立ちはだかる敵をばったばったとなぎ倒している。
そして仕掛けをくぐると赤い髪をポニーテールにした私と年の変わらない女の子が待ち受けていた---そう、髪と瞳の色は違えどその面差しは私のよく知る彼女によく似ていた。
「…っ!?何で…先輩がここに…
「…こんにちは」
僅かながらも動揺しているらしくその瞳は落ち着きがない。
「ようこそ…じゃなくて! よくぞここまで来たものだな!私はここのジムリーダーを務めさせて頂く…じゃなくてジムリーダーを任されたアスナだ!」
「あぁ、挑戦者の結鈴と申します。あの、大丈夫ですか」
「くう…ジムリーダーになりたてだからって油断などしないことだ!
お祖父ちゃんゆずりの才能とこの土地で磨き上げたホットな技、あなたに見せてやる!」
丁寧な対応をしそうになり慌てて高圧的に振舞おうとする姿は、どこか後輩に似ていて。先ほどの呟きといい、どうやら彼女は何か知っているようだ。もしそうであるならばバトルを早急に終わらせて質問をぶつけてしまいたい。
私のやる気が静かに満ち満ちたのを察したからか、ドンメルをだした彼女が指示を出すよりも先に皐月の水の波動が相手を襲う。
先制攻撃でマグマッグ、バクーダをあっさりと倒し、早くも残り一体まで追い込む。
「強い…でも、負けないよ!いけ、コータス!」
開閉音の後、出てきたのは火山を背負ったような亀のポケモン。
「皐月、みずてっぽう」
「コータス、にほんばれ!」
水鉄砲というにはおおよそ似つかわしくない威力の水流がコータスちゃんを襲って…やはり一発KOだった。
「くう…肩にちから入っちゃって…あたし、ジムリーダーになりたてだからって、ちょっと無理していたのかな…」
「そうかもしれません…あなたをよく知らない私でも微笑ましく思えたくらいですから。…それに、今回はそれだけではないでしょう?」
「!?それは…」
「もし差し支えなければ教えていただけませんか?」
あの子にしていたように、少し困ったような笑顔でお願いしてみる。
「………信じて、くれるか、わからないけど…」
「信じます。たとえどんなお話でも」
ゆっくりと彼女は語りだす。

 

  back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -