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ゴーゴーゴーグルという微妙な名前のゴーグルをかけ、砂漠地帯に足を踏み入れる。
雨で水気を吸った砂嵐というのは呼吸器にも悪影響を与えやすいので私はゴーグルにマスクという不審極まりない出で立ちでいる。正直息がし辛いのだが如何せん文句は言えない。
因みに朋はボールの中に入ってもらい、昴にもとお願いしたのだが聞き入れてもらえなかった。
一体何に対して怒っているのか、確信はないものの一応いくつか思い当たる事はまあ、あるのだけれど概ね謝って解決する問題ではない。
私の弱さが悪いのだから。
これはその報いなのだろうか。
「っ昴!!」
『!馬鹿!来るんじゃねェ!!』
砂に飲まれてゆく昴に手を伸ばし、私たちは砂の波に飲まれた。

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「っ痛…!昴、昴は!?」
「落ち着け馬鹿」
慌てて辺りを見回しキョロキョロしていると後ろから頭を叩かれた。
後ろを振り向くと白っぽい髪の男性が立っていた。
「…どちら様でしょうか」
ムスリと不機嫌を隠すことなく表情に出すと後ろにいた男性はさらに呆れてため息をつく。
「どちら様もこちら様もねえよ。人より後に砂に飲まれながら人より先に落っこちて気絶するとか前代未聞もいいところだろ」
っとに馬鹿じゃねぇのと悪態をつく男性。…今なんと言った?人より先に飲まれて?
「私が助けようとしたのは昴のはずなんですけど」
ひょっとしてこの白髪頭と昴を見間違えたのだろうか。いや、来んな馬鹿という昴の怒号をしっかり聞いていたので流石にそれはないだろう。ではスバルは何処に。
プチパニックに陥っていたらボールの開閉音がして、霊翠が出てきた。
『結鈴ちゃん?ちょっとちょっとしっかり!はい深呼吸!ヒッヒッフー!』
『霊翠っちそれラマーズ法だよー』
ボールの中から皐月がツッコミを入れている。私もそれはツッコミたかったので有難い。
『あ、落ち着いた?大丈夫?』
「はい、有難うございますね霊翠。皐月も有難う」
『いえいえー』
『あとムッt…じゃない、昴のことも心配しなくていいわよ』
へ、と間抜けな声が出てしまった。
『あの馬鹿なら結鈴ちゃんの目の前にいるから』
「あ゛あ゛ん?誰が馬鹿だ、馬鹿は結鈴だろ」
「え、何で私の名前知ってるんですか」
白髪頭の男性は蒼い目を鋭くしながら、睨めつけるように口を開く。
「お前ほんっと馬鹿だな。だぁらオレが昴だっての」

拝啓、天国のお祖母ちゃん。砂塵に飲まれたら私のパートナーの名を騙る男性に出くわしました。


 

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