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彼女を“保護”して三週間。観察していて思ったことは、よく働く子だということだ。
軟禁状態にあるにも関わらず文句の一つも漏らさず掃除や洗濯に勤しんでいる。食事も毎回目の前で毒見をしてから配膳するという徹底っぷりだ。そこまで疑っていなかったのでこれには驚いた。
思わぬ…いや、うれしい誤算もあった。人のいる家がこんなにも暖かいとは知らなかった。子供の頃から母は病気がちで、父も忙しい人だったから家にいるのはメイド達くらいで。けれども彼女らは飽くまで“仕事”でそこにいるだけだった。
大人になってトクサネに家を構えたけれどやはり一人の家は冷たくて、結局チャンピオンとしての業務や御曹司としてのパーティ、石の収集などとかこつけてなかなか帰ろうとはしなかったのに。
結鈴ちゃんが来てからはむしろ在宅時間が長くなった。いままで居心地の悪さすら覚えていた家に暖かみを感じるようになったのだ。

「ダイゴさーん、晩御飯できましたよー!」

扉の向こうではダンバルと二人(一人と一匹かな?)で出てこない僕に悩んでいるようだ。
監視のはずがすっかり絆されてしまっているな、と自嘲しながらそっと扉を開けた。



――*――*――


「結鈴ちゃん、君のことなんだけれどね」
夕飯のパスタを食べ終え、コーヒーをお出しするとダイゴさんはおもむろに話を始めた。
「確か君のいたところでは生まれながらの金髪は珍しいんだったよね?」

「ええ、そうですけど」

保護されて間もない頃、私のいた世界の話を尋ねられては話した。純日本人なのにと瞳や髪の色で子供の頃いじめられたこと。これは祖母からの隔世遺伝で祖母も若い頃やはり苦労したらしいことなど。

「それで、君のお祖母様の御名前は?」

「祖母の、ですか…確か旧姓は海老根で、名は海の蘭と書いてうんらんと読むそうです」
変わってますよね、と続けようとしたのですが、祖母の名を聞いた途端ダイゴさんの表情が強張ってしまいました。

「あの…」

「結鈴ちゃん、ひょっとすると、君のお祖母様はこちらの人かもしれない」


 

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