(限りなくロキドに近いキドロ)
(ローさんはキッドさんが大好き)




俺は内臓が大好きなんだと言うと何ともいえない顔で、そうだろうな何となく分かってたと返された。
ユースタス屋のくせに察しが良いなんて全く愛の力ってやつはすごい。なにしろ赤い瞳を覗き込んでにっこり笑っただけでユースタス屋はじりじりと距離をとり始めた。これから何を言われるのかまで察したみたいだ。「なぁユースタス屋、」遠のいた分だけ近寄って上目に見上げると、いつもなら圧されてたじろぐくせに、すかさず拒絶の言葉が降ってくる。「絶対断る、何言ってもきかねえからな!」さっきからずっとこれの繰り返しだ。
全く仮にも海賊王を目指してるくせに器が小さいにも程があるんじゃないのか。ちょっと腹の中見せてくれって頼んでるだけなのに。

「すぐ終わるって言ってるだろ!二時間…いや一時間!一時間で済ませるから!」

「充分すぎるほど長えよ!そもそも時間の問題じゃねえし!!」

「…どうしても駄目か?」

「駄目に決まってる」

「…ユースタス屋、俺はこれでもすげえ譲歩してるんだ」

「どこが!?」

「俺は確かにお前の中身に興味津々だけど、それでも手軽に弄れる直腸を、要するにお前の尻を掘らないでいてやるのは溢れんばかりの愛ゆえだろ」

「え、いや落ち着けトラファルガー、それ掘りたいって言ってるようにしか聞こえねえんだけど」

「当たり前だろ、今のところはお前が嫌がるだろうから我慢してるんだ。まぁそっちは機会があったらでいい、だからその前にとりあえず腹開かせろ」

「…一応聞くけど譲歩ってそれか?」

「うん」

一拍置いてユースタス屋が全身のバネをフルに使って逃げ出そうとした。が、当然そんなのは予想済みで、手近にあった果物ナイフを一閃するだけで、突然脚が消し飛んだユースタス屋は無様に顔からベッドに突っ込んだ。毛布の上でよかったな、でなきゃ鼻の頭くらい擦り剥いてそうな勢いだ。
痛いのかパニックになっているのかそれとも両方か、瞳を潤ませて必死で後ずさっているでかい図体を見ると庇護欲みたいなものが込み上げてくる。
ゴーグルが吹き飛んだせいで降りてしまった髪をクシャクシャ撫でて頭を抱いてやると、ようやく少し身体の力が抜けた。「馬鹿だなぁ、ユースタス屋。冗談だよ」たったこれだけで安心してしまうんだから本当に馬鹿だなぁと思うけど、きっと相手が俺だからだと思うと悪い気はしない。三億超えをここまで腑抜けさせるんだから、全くもって愛の力はすごいと実感するのも本日二度目だ。
ちゅっと音を立ててキスしてやるとユースタス屋の雰囲気が柔らかくなる。子供のような口付けを少しずつ深くしていくのがこいつのお気に入りだ。
口紅のせいで滑る唇を何度もなぞって舌を絡めて、ユースタス屋の少し尖った犬歯の形を確かめるように舐めるのが好きだった。
何度もそこの歯列ばかり辿っていると、咎めるように歯を立てられる。腰を引き寄せられ、代わりに少しだけ唇をほどいたユースタス屋がそれでも吐息の触れるごく近い距離で、舌出せ、と囁いた。こういうときばかりは命令するなと言う気にもならない。
おとなしく差し出した柔らかい肉を噛まれて、ぞくぞくと寒気に似た感覚が走る。少しざらついた表面をすり合わせ、縁を辿ってきつく吸い上げられると生理的な涙が滲んでくるのもいつものことだった。この至近距離で半分だけ目を開けると、涙に揺らぐ視界にユースタス屋の伏せた瞳が映る。ゆらゆらと水を隔てて見る赤い瞳は、近すぎて焦点が合わないせいもあって、まるで本物の宝石のようだ。本当にユースタス屋はどこもかしこも綺麗な色をしていて溜息が出る。
こぼれおちる一歩手前の涙を指の腹で拭われてからかわれたが、こんな甘ったるい声じゃあ腹も立たない。お返しにすっかり乱れた口紅を拭ってやると、指先にべっとりと付いた赤に挑発されているようで思わず腰が震えた。
お前って本当にキスするの好きだな、とさっきまでの解剖一歩手前の危機感は何処へやら、すっかり上機嫌なユースタス屋は時々本当に食べてしまいたくなる。馬鹿な子ほどかわいいとはよく言ったものだ。大雑把で忘れっぽくてどうしょうもない。
お前だって俺のこと好きで好きで仕方ないくせに、俺がどれだけお前のこと大好きか今ひとつ分かってないよなぁ。

「ん…うん、好き。ていうかお前の舌とか口の中が好き。これも一応内臓だと思うとすげえ楽しい」

「…は?」

「俺は今ユースタス屋の内臓をしゃぶって噛んで好き勝手弄くってるんだなぁって思うとテンション上がるんだよなぁ。…あ、やべえ勃ったかも…ちょっと責任取れよユースタス屋」

あぁ、その青褪めてドン引きしてる表情も好き。
やっぱりさっきのは冗談なんかじゃなくて、いつか本当に腹の中掻き回されて臓物弄られるとでも思ってるんだろうな。正解だよ、ユースタス屋。別に痛くしねえし、間違っても殺したりしねえから安心して怯えてみせろ、きっと可愛いから。



あいしてるから大丈夫!


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