それから間もなくローは高校生になった。
この辺でも有名な進学校で、制服が学ランからブレザーに変わった。
「お前、頭いいんだな」感心する俺に、当然だろと胸を張った後、「言うことはそれだけか?」と少しむくれたローは入学式の帰りで真新しい制服を着たままだった。

「似合ってる、すげえかわいい。ベストとかセーターはねえの?そっちも見たい」

「あるけど、今日は式だから正装なの」

「かわいいな。ちょっと大人って感じがする」

「大人なのにかわいいってなんだよ。かっこいいって言え」

「いやだね、俺にとってはずっとかわいいんだよ。なぁ、ちゅってしていい?」

「うわ、懐かしい…俺からしてあげる!」

成長したとはいえまだまだ細身のローに無理をさせるのは気が引けていたのに、俺の忍耐とか理性なんて吹けば飛ぶようなもんだと思い知らされた。初めて繋がったのは三回目に身体を重ねたときでローはまだ中学生だったから本当にどうしようもない話だ。
嬉しくてたまらない気持ちとバケツ十杯分くらいの罪悪感が混じりあって打ちのめされてる俺を、ローはいつまでも頭を撫でて慰めてくれた。
今更なのにと呆れられたけど、やっぱり最後までしてしまうと感動も背徳感もひとしおだ。学ラン着たかわいらしい男子中学生を部屋に連れ込んで犯してるってつくづく底辺だよなぁって思ったら逆に興奮して死にたくなったというのもある。今となってはいいかげん開き直ったけど。

少しずつ深くなっていくキスに必死で舌を絡めていたローが、擦り付けられた腰に気付いて俺を睨み付けた。
こぼれそうな唾液を飲み込んで胸を押され、ネクタイをほどこうとしていた手が軽く引っぱたかれる。

「…なんでもうこんな勃ってんの」

「しょうがねえだろ。今のお前、いかにも悪戯されてる真っ最中ですって感じだし…なぁ、制服着せたまましてもいいか?」

「いいわけないだろ!いきなり汚されたら明日からどうすんだよ!」

「セーター着ればいいのに」

「そういう問題じゃない!……シャツとかスラックスは洗えるし、替えもあるけど」

「じゃあそれでいい。ブレザーは衣替えの時期まで待つか、クリーニング前ならいいよな」

引き抜いたネクタイで後ろ手に括って、明るい午後のリビングでローを抱いた。
ボタンだけ外してスラックスも脚に引っ掛けたままで、じれったそうにしてるのを承知で服の上から触っていたら終いには泣き出されたけど、今日ばかりは文句を聞いてやる気にはなれない。
ジェルのチューブを思いきり絞ると薄いピンクの半固体が胸元に飛び散ってローが冷たさに息を呑んだ。すぐに体温で溶け出していって、白いシャツに染みを作りながら滑り落ちる様に妙に興奮した。

「後で出すときぶっ掛けてもいい?」

「なんでもい…から、も、やだこれ…っ、脱がせろ…!」

「だめだ、今日はこのままするから」

「だって、ちゃんと触ってくれね…し…!」

「だからほら、ジェル好きだろ、ぬるぬるしてて。自分でしてみれば?」

「ど…やって」

「テーブル目の前なんだから使えばいいじゃねえか」

ローは少しの間ぼんやりと俺を見上げていたが、そのうち自由の利かない腕で苦労して起き上がり、ガラスの嵌った低いテーブルに上半身を乗せた。自然腰が突き出される形になって物言いたげな目がこっちを見る。膝を付いて背骨のラインを舌で辿ってやればびくびく震えて、少し動いた拍子にジェルに塗れた胸元がガラスを滑った。

「…ッ、ふ、」

「気持ちいいのか」

「…ぅ、ん…せなか、好き…」

「背中だけ?」

「……うん」

「じゃあベッド行くか?そっちで今みたいに舐めてやってもいいけど」

「やっ、…だめ、乳首…も、」

「気持ちいいんだ。そんな動き方で足りるのか?」

「…も、触って、って」

「だめ、自分でしろ」

泣きそうな顔をしてたけど俺が完全に鑑賞する気になってるのを見て諦めたのか、わずかに躊躇った後で上半身がゆっくり動き出す。体重で押し潰された乳首がガラスに擦れてローが熱のこもった溜息をついた。ジェルの水分でキュッと時折響く音がやらしい。下着ごと引き下ろされたスラックスが脚元に絡んで動きづらいのか煩わしそうに腰を捩ってる。

「ユ、スタス屋ぁ…服、じゃま…」

「別に動けてるだろ」

「ちがう…シャツ、が…」

擦り付けているうちに濡れた布が貼りついてきて、シャツ越しではうまく刺激が伝わらないらしかった。何とかずらそうともがいてるけど、つるつる滑るガラスの上じゃ思うようにならない。ユースタス屋、とローがもう一度俺を呼ぶ。腕をほどくか、いつもみたいにちゃんと触るかして欲しいんだろう。
いい加減折れてやってもいいかと思ったが、あんまり期待に満ちたかわいい顔するからもう少し見ていたい。自分で何とかしろと撥ね付けると、信じられないといった風に固まってぼろぼろ泣き出した。

「泣いてても終わんねえぞ」

「やだ…もう、できなっ…」

「小さい頃のローはたくさん頑張れたのにな」

「…だって…」

「しょうがねえな…じゃあどうして欲しい?」

「…こんな…じゃ、イけない…ちゃんといれて」

力の入ってない身体でローがふらふら起き上がった。バランスを崩しかけて咄嗟に抱き寄せたら、そのまま胸元でうずくまって動かなくなってしまった。窘めるように名前を呼んでもいやいやと首を振られる。すっかり勃ちあがってる性器を太腿に擦り付けられて、あったかく汚されていく服に苦笑した。
ローの耳元にわざと潜めた声で二言三言囁くと、火を噴くんじゃないかってくらい顔が真っ赤に染まる。

「…いい年して…ッ」

「いいだろ、だってお前ちっちゃい頃呼んでくれなかったし」

「もう小さく、なんか…」

唇がぎゅっと噛み締められる。葛藤がひしひしと伝わってきて、だけど絶対聞いてくれるという確信があったから黙って恥ずかしがるのを眺めてた。
長い沈黙に耐えられなくなったのか、ローがおずおずと口を開く。

「……キッド、おにいちゃ、ん」

「………」

「…ローに…きもちい、こと…たくさん教えて…?」

「……うわ、」

「死ね…三十にもなって…!」

「やべぇ思ったよりくるな…何でも好きなことしてやるよ」

俯いて小さくなってるローを床にうつ伏せにひっくり返した。腕を括ったままだから、腰を高く上げると押し付けた肩が少し辛そうだ。だけどローはそんなのも気にならないみたいに自分から足を少し広げて安定するようにした。
転がっていたチューブを拾い、後ろに直接押し当てて中身を搾り出す。腹の中に冷たいジェルが入っていく感覚にローが喘いで腰を揺らした。まだろくに慣らしてもいないのに早く早くと涙声で急かされる。一回イかせて落ち着かせてやろうとしたけど、前に回した手は嫌がって拒否られた。突かれながらがいい、とそんなこと言われて眩暈がしそうだった。

「いつの間に後ろで咥えねえと満足できなくなったんだよ」

「…ッ、しら、な…」

「へぇ、知らないうちにずいぶん悪い子になったな」

「そ…なの、ユ…スタス屋、が…!」

「うん、俺のせいだな」

もう遅いけど、ごめんな。
バックのまま二回犯して、それでもまだ収まらない熱をローが舐めてもう一回抜いてくれた。体液でべちゃべちゃの床に膝を付いて、後ろからは俺が吐き出したものが少しずつ溢れ出て太腿を伝ってた。そんな状態でうっとり目を細めて俺のをしゃぶってるローを見てたら何回だって出せる気がした。立てなくなるからもうだめ、と必死に拒否してた泣き顔だって、思い出したら興奮材料でしかない。

「も…出る?」

「ん…終わるのもったいねえけど。なぁロー、最後に言ってよ」

「………」

「今日だけ、な?」

「……おにいちゃんの…ホットミルク、ちょうだい」

差し出された舌の上に幾分薄くなった精液が飛び散る。
それなりに量があるから、あっという間に溢れて零れてしまうのにローがもどかしそうな顔をして直接先端に吸い付いてきた。こくんと音を立てて飲み込んで、物足りないというように中に残った分まで欲しがってるのがかわいい。口先では恥ずかしがるくせに。
また勃ってるローのを足で擦り上げてやったら、すぐに痙攣しながらイった後にぐったり倒れ伏せた。力が抜け切ったのか辛うじて締めてた後ろから泡混じりの白濁が溢れて、ローの出した分と混ざりながら床を汚した。




「……最悪。なにこの変態」

「拗ねるなって、制服かわいかったんだよ。それにもう高校なんてローはすぐ大きくなるなぁって感動したっつうか」

「…なんかユースタス屋、おっさんみたい。それとも小さいまま悪戯するほうが好き?変態趣味だから?」

「そんなことねえよ。あと変態とか言うな」

「事実だろ、昔も今もいたいけな俺にあんなことしておいて。少なくとも悪い大人じゃん」

「だってお前かわいいし…あーだめだ、お前に罵倒されるとそれはそれで燃える」

「…うっわ、さすがに引くぞ」

怒ってたくせに、風呂から上げてバスタオルを広げると素直に寄ってくる。成長してもこういうところはぜんぜん変わってない。
またお前に会えてよかった。
濡れた髪を拭いてやりながら呟くと、まだ服も着てないローが力いっぱいしがみ付いてくる。

「あのときから決めてたんだ。大きくなったら、今度は俺がユースタス屋を迎えに行こうって」

「昔と逆だな」

「………」

「ロー?」

「…もういなくならないでな。今度は絶対離さない」

記憶の中の小さなローはわたあめみたいにふわふわ甘い匂いがした。
目の前の青味がかった髪に顔を埋めると代わりに俺と同じシャンプーが香って、身体だってふにふに柔らかかった子供のものとは少し違う。
だけど頭から齧って食べてしまいたいような衝動は同じで、あの頃も今も、それを押さえ込むのに少し苦労している。




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