(学パロで生徒×教師)



「家庭訪問?」

突如言い渡された単語にキッドは首を傾げる。キッドの通う高校にそんな制度はなかったはずだ。少なくとも去年はそんな話を聞かなかった。
なんだか小中学生のイメージだな、と思いながら目の前で難しい顔をしているローに「なんの冗談だ?」と問うも、生真面目な担任教師は「真剣だ」とそっけなく答えるだけだ。

「…高校生にもなって?」

「お前が問題ばかり起こすからだろ!親御さんは学校に出向いてくださらないし、一度ちゃんと話をしないと」

「んー…無駄だと思うけど。まぁいいや、伝えとく。いつ?」

「あまり急でも申し訳ないから…今週から来週にかけて、都合のいい日を聞いておいてくれるか」

「じゃあ先生が大丈夫なら、金曜の放課後」

「いや、だから親御さんの都合を、」

「別にいつでも一緒だから。後でちゃんと伝えとくって」

「…分かった、じゃあ一応そのつもりでいるから。もし変更があったら教えてくれ」

なんとなく納得しがたいという顔をしていたが、キッドが一応の了承をしたのでこれ以上食い下がってもしかたないと思ったのだろう。
絶対だぞ、と念を押し、クラス名簿でキッドの肩を軽く叩いてローは職員室への階段を降りていった。



そして金曜の朝、ホームルームが終わるなり小声で「今日の放課後だけど大丈夫だな?」と念を押すローにキッドは苦笑いを返した。
昨日の帰り際にも確認したのに、まったく心配性だと笑い飛ばすと、「どの口が言うんだ、日頃の行いだろ!」と拗ねたような怒ったような顔をされる。細いフレームの眼鏡が理知的な雰囲気を醸しているのに、への字に曲げられた唇がアンバランスに幼くてかわいいと思ったが、もちろんそれを率直に言ったりはしなかった。ローはキッドのからかいをいちいち真面目に受け止めるので、クラスメイトの大勢いる教室で真っ赤になって怒りだか羞恥だかに震えさせるのはかわいそうだと思ったのだ。
ローに会うためだけにホームルームに顔を出したキッドは、そのまま惰性で一限目の授業に出席し、あとは放課後まで屋上で惰眠を貪った。
ローに見付かったらとんでもない剣幕で叱られただろうが、幸いにも今日は彼の受け持つ授業はない。それでも各科目担当の教師が担任であるローに苦情を言ったのか、時折わざわざキッドを探し出して叱りに来ることがあったが、それはそれで悪くなかった。センセイも一緒にサボれば、などと言おうものならひとしきりの説教が降ってきたが、しぶしぶといった風に教室に戻るキッドを見送る満足そうな顔は好きだった。
一日の終了のチャイムを聞き、大人しく教室に戻ったキッドは、何か言われる前に自分からローを捕まえた。

「先生、俺んち来るんだろ?どうせだから一緒に帰ろうぜ」

「え…?いや、そういう訳にはいかないだろ。後でお邪魔するから、お前は先に帰ってろ」

ちょっと準備もあるし、と渋るのをキッドは聞き流し、ローの抱えていた重たそうなノートとプリントの束をひょいと取り上げた。
職員室だろ?と先に立って歩き出すとローは驚いた顔をして、慌てて後をついてきた。

「準備なら待ってるし。どうせそんなに時間かかんねえだろ」

「それはそうだけど…」

「いいじゃん、一緒に行こうぜ。家の場所、ちょっと分かりにくいかもしれねえから案内してやるよ。迷うよりいいだろ?」

「ん、そっか…じゃあそうしようかな。先に済ませる用もあるから、校門で待っててくれるか?」

ローの机にどさりと荷物を置くと、ありがと、と照れたような笑顔が返ってきて、思わず頭を撫でたくなったがここが何処かを思い出してぐっと堪える。別に実行してもキッドは一向に構わないのだが、ここでローの機嫌を損ねると後が面倒そうだと判断した。どうせもう少しの辛抱だ。
腹の内でこっそり哂ったキッドに気付くはずもなく、ローはばたばたと慌しく資料を整理し、荷物をまとめていた。



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