「なぁ、ナースなら検温とかするもんだよな」

「検、温…?」

「身体すげえ熱い。自分が今何度くらいあるか分かるか?」

穿かせたままの下着を無理やり横にずらし、先走りにまみれたローの手をとって後孔に指を導いた。慣れた穴は期待するように蠢いていて、指先が触れただけで貪欲に飲み込もうとする。見慣れたはずの光景で、肌に食い込む可愛らしいレースばかりが異質だった。伝い落ちる体液に濡れた穴はローの指を一本簡単に咥え込み、それでは足りないと言わんばかりに熟れた粘膜がはくはく口を開いている。

「はっ、相変わらず食い意地張った身体だな。で、熱あんだろ?何度?」

「しらね…っ、こんな、で、分かるわけ…!」

「頼りねえな、そんなんで患者見れんのかよ」

楽しげに嘯くキッドの手にはいつのまにか細身の体温計が握られていて、気付いたローが何か言うよりも早く銀色の先端が胎内に潜り込んできた。ひやりと冷たい感覚に思わず後孔を締めてしまい、震えた指先が腸壁を引っ掻いて悲鳴のような声が洩れる。

「やめろばか…っ!はやく抜け、って…!」

「使い方は間違ってねえだろ」

「そ、いう問題じゃ…あ、ぁ、やめ、」

ぐっと押し込まれた体温計がみるみる深いところに入ってくる。丸みを帯びているはずの先端はその細さゆえにやけに鋭く感じられ、キッドが中を探るように回すと腸壁を突き破られそうな錯覚に冷や汗が出た。指よりは明らかに長いそれが前立腺を掠め、思わずねだるように腰を揺らしてしまうとそこばかりをぐりぐりと弄られる。いつもに比べれば質量などろくに感じないのに、弱い電流を流されるような快感ばかりがあって頭が白く濁っていく。

「お前腰動かしすぎ…これ計れてんのか?」

「そん、な…そんな奥で、計んね、よ…!も…抜けって、やだ、奥っ、突くなぁ…!」

「気に入らねえの?」

「だって、それ冷てぇし、硬いばっかでやだ…腹ん中いっぱいが、い…」

「…お前な…やっぱ撮っとけば良かった」

濡れた体温計を引き抜いてサイドテーブルに置くと、座ったまま荒い息をつくローの体を引きずり倒してうつ伏せにした。弾みで入ったままだった指が抜けて、摩擦にローが大きく喘ぐ。「挿れて欲しいならちゃんとねだれ」と汗や体液の伝う尻を軽く叩いた。
命じられるままにローはガクガク震える膝でどうにか身体を支え、腰だけを高く上げてどろどろのショーツを引き下ろす。キッドは脱ぐなと言ったけれど、きつい下着は穿いたままずらすには限界があって邪魔で仕方なかった。ガーターベルトは身に付けたままで、腰から太腿を飾るレースやリボンと、締め付けから開放されて反り返る性器の対比があまりにアンバランスだ。ぺったりとシーツに胸を伏せれば短いスカートは完全にずり上がり、恥辱的な格好で下肢を晒す羞恥に脳がぐちゃぐちゃに蕩けていく気がした。
「も…いれろ、」消え入りそうな精一杯の声で言い終わるや否や、爪が食い込むほどきつく腰を掴まれて腹に杭が打ち込まれる。

「ぁ、あ――ッ…!」

「っ、力抜け…てかてめぇいきなりイってんじゃねえよ、ほんと堪え性ねえな」

ばたばた音を立ててシーツに落ちる白濁に気付き、強すぎる締め付けに汗を浮かべながらも痙攣の治まらないローの身体を力任せに揺さぶった。ガーターベルトの留め金がずれ、激しい動きにストッキングがずり落ちる。力無くシーツを手繰り寄せて逃げようとする身体を引き戻し、剥き出しの尻を叩くと悲鳴のような嬌声が上がる。服の裾から手を伸ばし、布に擦れて硬くなった乳首をきつく摘んで潰してやった。達したばかりのローにゆるい刺激などただの拷問で、痛みとせめぎ合うくらいでないと意味が無いのだ、本人は決して認めないが。キッドにとっては隅々まで知り尽くした身体で、吐精したばかりの性器をまた勃ち上げることなど容易だった。いくらもしないうちにローは飲み込めない唾液と涙でぐしゃぐしゃの顔をシーツに擦りつけ、「いやだ」と「もっと」が混じったうわごとを繰り返しながら自分から腰を動かし始めた。
ふと思いついて、繋がったままローを抱え上げて位置を入れ替える。無理な動きに声もなく仰け反った背筋を撫で、足を投げ出して座った上にローを跨らせて囁いた。

「トラファルガー、自分で動けるよな?」

「できなっ…」

「さっきの体勢じゃ背中しか見えねえんだよ。せっかく可愛いかっこしてんだから、もっとちゃんと見せろ」

そんなことを言われても、体重で限界までキッドを呑み込んで、蛹のように中までドロドロに溶けた身体はまともに言うことなど聞かない。ぎゅうっと後ろを締めると腹の中で暴れる感覚をどこか虚ろな瞳で受け止めていたローは、いつまでも動こうとしないことを叱咤するように突然腰を揺さぶられ、短い悲鳴を上げた。

「聞いてんのか?仕事中にぼんやりするなんてしょうがねえナースだな」

「ぁ、あぁっ…だめ、だめそれ、深、あ、うぁあッ…!」

「はっ…こんなんただの注射だろ?お前が泣き喚いてどうすんだよ」

楽しそうに詰る声に反論も罵倒もできないまま、ともすれば崩れそうになる身体を両腕を掴まれて支えられ、不安定に揺れる上体と下からの重い衝撃に甲高い嬌声ばかりが部屋に散らばっていく。
しかし、このままなし崩しに引きずり落とされるのかと思った意識は、性器に触れた冷たさと抉じ開けられるような痛みに現実に引き戻された。
見れば先ほどの体温計を再び手にしたキッドがその先端を尿道に差し込もうとしている最中だった。驚いて咄嗟に逃げをうつと埋め込まれた性器で前立腺が押し潰され、また抑えきれない悲鳴が上がる。だらしなく開いた唇から零れる唾液を舐めとり、キッドは小刻みに腰を揺すりながら狭い尿道に体温計を出し入れした。

「な…何して、」

「んー…だから検温?さっきうまく計れなかったし」

「ふざ、け…や、痛、ぁっ…あ、」

「嘘つけ、ここ好きだろ。後ろと一緒に弄られるといつもぶっ飛ぶくせに」

前触れもなく下から突き上げられて反動で体温計の先端が少し深く刺さり、痛みか快感か分からない衝撃にローは身体を仰け反らせて達しそうになったが、尿道を塞いだ冷たい塊が邪魔をする。こぷ、と隙間から少量の白濁が漏れたが放出には程遠い。狭い管の中で圧力を伴って逆流する感覚に狂ったように髪を振り乱して泣き喚くしかなかった。ぶっ飛ぶ、とキッドは表現したが、こんなことをされたら頭の中は真っ白で、出したいとそれしか考えられなくなる。
為す術も無く揺さぶられるうちに身体は浅ましく快感を拾い始め、苦しさを通り越して痺れているような性器はいつの間にか体温計の細い部分を深くまでしっかり咥え込んでいた。これで電子音が鳴って数値読み上げられたら恥ずかしさで死ねる、そんなことを頭の隅で考えながら、またせり上がって来る熱の気配に喉を反らせて喘いだ。

「ゆ、すた…これ外せ、もうでる、出した、い…!」

「さっきから少しずつ零れてるぞ。このままちょっとずつやったら全部出せそうだな」

「やっ…むり、頭おかしくなる…っ…!」

「なれば?もうビデオも撮ってねえんだ。どんだけ恥ずかしいことしても今だけだし、どうせ俺しか見てねえよ」

甘ったるい毒のような言葉だと思った。一枚ずつ薄皮を剥ぐようにローの理性を奪い去って、奥にある本能を暴こうとする。部屋を満たすぬるい空気はまるで酸素を含んでいないようで、忙しなく呼吸しても息苦しさが少しも薄れない。早鐘のように打つ脈拍が耳元でうるさくて、何が苦しくて何が気持ちいいのかも分からなくなる。
やさしく目尻の涙を舐めて、やさしく名を呼ばれて、何もかもどうでもよくなってキッドの首に腕を回すと衝動のままがむしゃらに腰を振った。おかしそうに笑うキッドに体温計が入ったままの性器を強く揉みしだかれ、悲鳴とも嬌声ともつかない高い声を上げて精液を吐き出せないまま空白の頂点に達する。

「イったのか?よすぎてたまんねえって顔してる」

「違…っ、ふっ、ぁ…こんなんじゃ足りな…」

震える指で体温計を引き抜き、勢いなくとろとろと零れっぱなしの白濁を根元を押さえ付けてどうにか止める。自分の手でもいいからこのまま全部扱き出してしまいたい、その誘惑を押さえ込んで有り余るほど、内臓がすり潰れるくらい掻き回して犯し尽くして欲しかった。
後孔を締めて腰をバウンドするように上下させると、キッドが息を詰めて腹の中の質量がぐんと増す。膝が震え、滑りのいいストッキングがシーツと擦れてどこか硬質な音を立てた。いい度胸だ、そう言って肉食獣のように唇を舐めたキッドに甘く濁った期待が胸を満たす。
気持ちよくして、何してもいいから。
たった一言そうねだれば、後は底の無いぬかるみのような快楽に沈めてもらえるのだと学んでしまっていた。

「あっ、ん、んぅ…ッ、ユ、スタ…!もっと、もっといちばん奥、いれて…ぁ、あっ…!」

「これ以上届かねえだろ…っ、腹ん中食い破って欲しいのか、てめえは」

「欲し、っ…も、このまま死んでもい、から、もっと…!」

腰骨が痛むほどきつく掴まれ、きっと痣になるだろうとローは殴られるような突き上げに必死に耐えながら考えた。うねる腸壁は意志とは関係なくキッドを食い締め、ぎりぎりまで引き抜かれる度にとろけた肉が捲くれ上がる。
舌を噛みそうになりながら懇願ばかり口にするローは焦点の合わない瞳で熱に浮かされ、意識が定まっているかも怪しかった。

「ッ、トラファルガー…出すけど、中がいいか?それともぶっ掛けてほしい?」

「な、なかっ、そのまま出せ、抜くなぁ…!」

「ゴムも付けてねえのにナースがそんなこと言っていいのかよ、デキちまうかもな」

「平、気、いいから、今日だいじょうぶな日…だから、お願…っ!」

「ははっ…!お前でも大丈夫とか危ねえとかあんの」

軽々と持ち上げられて背中からベッドに落とされ、一瞬息が詰まって硬直した身体を無理やり押し開くように強く抉られる。ストッキングが破れるほど爪を立てて両脚を抱えられ、二つ折りにされた身体に真上からキッドの体重が掛かった。完全に浮いた腰の深くをごりごり潰されて、ローは断続的な声を上げながら自分の性器をめちゃくちゃに擦って吐精した。前も後ろも乱暴なぐらいに扱われ、目の前がちかちかするほど気持ちよくて堪らない。皺だらけになった白い服の胸元にあたたかい精液がべったりこびりついたが、それをはしたないと思う余裕も無く、引いていく快感の切れ端を手繰ろうと埋まったままのキッドの熱を締め付ける。しかし額に汗を浮かべて低く呻いたキッドは、引き止めようとするローの胎内に逆らって今にも爆発しそうな性器を引き抜いてしまった。
だめ、いやだぁ、と泣き喚くローを押さえつけ、一、二度性器を扱くとすでにドロドロになっている顔に向けて精液を放つ。びしゃ、と弾けた白濁が頬や鼻筋を汚して口にも入り、呆然としながらそれを舐めたあと、ローはくしゃりと顔を歪ませてひどく悲しそうな表情をした。

「…ぁ、なん、で、抜くなって言ったのに…!」

「泣くなよ、腹ん中に欲しいならもっかいすればいいだろ」

「…っ、する…全部よこせ」

邪魔なスカートの裾をたくし上げ、見せ付けるように体液の沁み込んだそれを口に咥えて再びキッドの上に跨った。神経に直接電流を流されているような痙攣が止まらなかったが、まだ完全に勃起していないキッドの熱に下肢を擦り付けていると泥のような快感への期待が気だるさを上書きしていく。
一転してとろけた瞳を見せるローに、さっきまで泣きそうな顔してたくせに、とキッドは苦笑して、唾液でべたべたになった服の裾を取って精液の味のする唇に口付けてやった。

「物欲しそうな顔しやがって、ビッチなナースもいたもんだな。安静にしろっていう立場じゃねえの?」

「しらねえよ、ここ充分元気だろ…なぁ、もっといっぱい注射して」

これっぽっちじゃ全然効かないから。
でも痛くなんてしないでね。



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