「おはよう、神楽ちゃん」
「幸子アル!」


二限目終わりの休み時間、総悟が忘れたお弁当を届けるために一年生の教室を訪れた。真っ先に私を見付けた神楽ちゃんが、勢い良く抱き付いてくる。可愛いなぁ。頭を撫でてあげれば、嬉しそうにピンク色の頭が揺れた。


「放課後一緒にゲーセン行くネ!マリカーで勝負ヨ!」
「ふふっいいよ」


キャッホー!神楽ちゃんは両手を広げて喜んだ。
強暴な男兄弟の中で育った私は、妹みたいな存在の神楽ちゃんが可愛くて可愛くて仕方ない(神楽ちゃんが強暴じゃないとは言い切れないけど)


「死ねチャイナァアアア!」
「神楽ちゃんんん!?」


次の瞬間、激しい音と共に総悟の投げた机が神楽ちゃんにクリーンヒットした。神楽ちゃんは教室の端まで吹っ飛ばされて完全に白目を剥いている。まさか死んだ?「神楽ちゃん…?」恐る恐る名前を呼ぶと、神楽ちゃんは立ち上がって総悟に食ってかかって行った。


「何するアルかァアア!」
「そこ邪魔でさァ、さっさと幸子から離れやがれ」
「お前には関係ないネ!」
「ちょ!二人共、落ち着いて!」


一触即発。総悟と神楽ちゃんが私を挟んで睨み合っている。二人の間に激しく火花が散った。
いつも総悟は神楽ちゃんに喧嘩を吹っ掛ける。好きな女子にちょっかいを出したがる小学生男子の心境ではないかと疑ってみた事もあったが、ここまで啀み合う姿を見ると少し違うような気がする。
今にも掴み掛からんとする二人を宥めようと試みるが、彼らに私の声は届かなかった。


「幸子が好きなのはこの私ネ!」
「幸子は俺のものでさァ!」


「神楽ちゃんストーップ!」遠くで叫ぶ新八くんの声も虚しく、試合開始のゴングが鳴った。
三限目の授業は受けられないだろうな、総悟と神楽ちゃんの投げた机が飛び交う中で、私は大きく溜息を吐いた。



クソガキ×2
(誰にも止められない)



「…で、喧嘩の理由は何だ」
「コイツが悪いんでィ」
「何言うネ!お前が幸子一人占めしようとするからいけないアル!」
「ぶっ殺されてぇのか」
「いい加減にしろコノヤロー!」


昼休み、職員室に呼び出された私達は、銀兄に延々と説教をくらった。当然、昼ご飯は抜きだ。


end





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総悟と神楽とついでに新八は同じクラス。


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テーマ「人外ファンタジー」
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