俺の名前は近藤銀時。言わずと知れた近藤兄弟の長男だ。

朝。スクーターの後ろに幸子を乗せて登校。幸せで緩みそうになる顔を必死で引き締める。幸子の前ではカッコイイ兄貴でいたい。


「銀兄、いってきまーす!」
「おう。頑張れよ」


午前中。朝一で総一郎くんのいる一年生のクソガキ共の授業。早々に居眠りを始めた総一郎くんを叩き起こす。どうせ自習だが、余り身内がだらしないと俺がババアに怒られちまう。そういえば今日の食事当番はマヨネーズ馬鹿だったような気がするからついでにメールしておいた。


「はーい、今日の授業は自習!」
「だったら何で俺を起こしたんでさァ」
「アレだよアレ、兄貴としての優しさ」
「…ウゼェ」


そんなこんなで昼休み。おそらく中身はマヨネーズであろう弁当箱は納豆眼鏡ストーカー女に餌付けしておくとして、俺の昼飯は購買の菓子パンといちごオレ。さて、午後の授業も頑張るとするか。
午後のクラスも自習って事で今週のジャンプを読み返しているとブーブーと携帯が鳴っているのに気が付いた。メール画面を見て心臓が跳ねた。「From:幸子 今日の放課後買い物付き合って(ハート)」幸子が俺にメールを……!しかも語尾についたハートの絵文字何コレめっちゃ興奮するんですけどォオオ!…というわけで、


「はーい!テメエら今から張り切って授業すんぞ!」
「えぇえぇええ!!?」


放課後。幸子と待ち合わせた昇降口に行けば無駄にカッコつけて立ってる晋助と鉢合わせた。


「お待たせっ!銀兄、晋兄、早く買い物行こう!」
「ちょ!幸子ちゃんどうゆう事か説明してェエ!」
「今日はスーパー特売日なの!トイレットペーパーお一人様二つまでだから頑張ってゲットしないと」
「………」
「………」


幸子ちゃん。こんないい子に育ってくれてお兄ちゃん嬉しい。ああでも、二人で出掛けるの楽しみだった。


「今日の夜はカレーにしよう」


マヨネーズ馬鹿の代わりに晩ご飯を作ると言った幸子はテキパキと食材を探し始めた。甘口のカレールーを手に取った俺と同時に辛口のルーを掴む晋助。再び俺達の間に火花が散った。


「カレーは甘口だろうがァアア!」
「んなガキみてぇもん食えるかァアア!」
「うるさぁあい!間を取って今日は中辛っ!」


買い物をすませ、家に帰って三人でカレーを作った。幸子となかよく台所に立つ姿はまるで新婚さん!と言いたくてもチビ助が邪魔で仕方がない。お互い同じ事を思ってたのか何度も勃発する俺達の喧嘩を何度も幸子が止める。こうして今日の晩ご飯のカレーは完成したのだった。


「いっただきまーす」


晩ご飯はみんなで食べる。それが近藤家の掟である。まあそんなもん幸子がいなかったらとっくに終わってただろう。
夜。食事が終わって食器を洗う幸子の隣で洗い終えた皿を拭く俺。やっと二人きりになれた。「銀兄あのね、」今日あった出来事を楽しそうに話す幸子が愛おしい。なんて思ってしまう自分はオッサンか。
でも幸子が笑ってる、そんな日常が馬鹿みたいにずっと続くように。俺は、そのために生きてきた。


「幸子」
「なあに?」
「宿題やって、…今日は早く寝ろよ」
「うんっ」



おやすみ。
幸子、今夜も良い夢を。






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匿名さま(12/15)
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