俺の名前は近藤十四郎。言わずと知れた近藤兄弟の三男だ。

朝。気怠そうにだらだら登校する兄弟たちをぶっ飛ばしたい衝動にかられるが、幸子がいる手前、俺から喧嘩をふっかけるわけにもいかない。幸子の前ではクールな兄貴のままでいたい。


「そういえば今日の食事当番ってトシ兄?」


俺が頷くと露骨に嫌そうな顔をする幸子。何がそんなに気に入らないというのだ。
午前中。授業を受けていた俺の携帯に親父からメールがきた。何か急用だろうか。「From:親父 最近加齢臭に悩んでいます。助けてください」知るかァア!!返事を返すかどうか悩んでいたら別の奴からメールが入った。「From:天パ 今日の食事当番テメエだろ」教師が授業中携帯いじってるんじゃねェエ!!さらに廊下をぶらぶら歩く晋助を発見。アイツまたサボる気か!


「どいつもこいつも授業中だろうがァア!!」


そんなこんなで昼休み。自分で作ったマヨネーズ弁当を食べている最中にメールが届いた。「From:総悟 死ネ」どういう事だァア!!
イライラがピークに達そうとしたそのとき、幸子が俺のもとに辞書を借りに来た。「どうしたのトシ兄?」と首をかしげる幸子。かわいいな。おかげで怒りを鎮める事ができた。これで午後の授業も頑張れそうだ。


「起きろ総悟。部活行くぞ」
「チッ…あんたですかィ。悪いんですけど今日は腹が痛いんで部活は休ませてもらいまさァ」
「嘘つけ。それからテメエ昼間のメールはどういう事か説明しろコラ」


部活中嫌々素振りを繰り返す総悟を怒鳴り付ける。それどころか隙あらば逃げようとするので、俺の心労がどんどんたまっていく。


「ちょっと野暮用があるんで帰らせてもらいまさァ!」
「待てコルアァアァアア!」


ああ俺だって早く帰りたい。早く帰って幸子の顔が見てえなんてすでに末期じゃないかと思う。だが俺は剣道部主将としての誇りを忘れるわけにはいかねえ。というわけで総悟テメエも道連れだ。


「おかえりなさいっ」


玄関を開けて一番に俺を出迎えてくれたのは幸子の笑顔。家の中は幸子の好きなカレーのにおいでいっぱいだった。


「今日の食事当番は俺だろうが」
「だってトシ兄部活大変だったでしょう?だから私が代わりに作ったの」
「幸子っ…!」
「(こいつに任せたら晩ご飯までマヨネーズに成り兼ねん)」


晩ご飯はみんなで食べる。それが近藤家の掟である。まあそんなもん、幸子がいなかったらとっくにこのテーブルは戦場になっていただろう。
夜。食事が終わってさっきからテレビのチャンネルを変えまくっている晋助を叱るべきか考えていると幸子が勉強を教えてくれとねだってきた。


「あのね、数学で解らないところがあるの」
「じゃあ俺の部屋で勉強するか」
「うんっ!」
「待ちなさい!勉強教えてほしいなら何で俺じゃないの!?銀さんこれでも先生なんだけどォオ!」
「幸子、俺が教えてやらァ。だからまず俺の部屋に来な」
「銀兄は国語の先生だし、晋兄はいろいろうるさいから嫌。トシ兄行こう」


世界の終わりのような顔をする二人を残して、俺の部屋で幸子の勉強を見てやる。最近幸子は本当によくやってると思う。ノートを見れば授業をちゃんと聞いてる事が分かる。解らなかったところも、俺が少し教えてやっただけですぐ理解した。ウンウン。幸子もちゃんと成長してんだな。
授業の予習復習まで終わらせた幸子は眠いのかさっきから何回もあくびを繰り返している。そろそろ寝た方がいいだろう。


「幸子、もう寝ろ。明日も学校だろ」
「ふああ〜うん。ありがとうトシ兄」



おやすみ。
幸子、今夜も良い夢を。



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