俺の名前は近藤総悟。言わずと知れた近藤兄弟の四男だ。

朝。今日も兄弟仲良く登校。正直嘔吐が出るが幸子が楽しそうなので今は大人しく我慢する事にする。幸子の前ではカワイイ弟を演じていたい。


「幸子!」
「わっ神楽ちゃん!おはようっ」


前言撤回。勢いよく幸子に抱き着くチャイナや挨拶してくる他の奴らが気にくわないから全員後で絞める。
午前中はかったるいので居眠りを決め込もうと思ったら、ツイてない事に朝から旦那の授業。どうせいつも自習のくせに真面目に授業を受けろと叩き起こされてしまった。斜め前の席でチャイナが俺を馬鹿にしたように笑っている。あいつのせいで朝からずっとイライラしてたので消しゴムバズーカをお見舞いしてやった。


「何するアルかァアア!」
「テメェ朝から調子乗りすぎなんでさァ」
「うぬガアア!くらえ!シャーペンミサイル!」
「二人とも廊下に立ってろコノヤロー!」


そんなこんなで昼休み。弁当箱を開けた途端酷い異臭がすると思ったら飯を覆うようにしてマヨネーズが山盛りに盛られている。今日の食事当番はあの野郎だったのか。最悪だ。とりあえず野郎に「死ネ」とメールして、弁当箱は地味眼鏡の机に締まっておいた。
幸子の教室に行くと、幸子は山崎と机をくっつけて昼飯を食べていた。幸子も自分の弁当は未開封のまま購買で買ったパンを食べている。


「山崎、テメェの焼きそばパンよこしやがれ」
「えぇええ!?」
「いじめちゃ駄目だよ総悟、私のあんパン食べていいから」


幸子の優しさに免じて今までの事は全て水に流してやった。俺ってばつくづく単純な男。
このまま幸子と離れたくなかったがそういうわけにもいかず渋々教室に戻る。午後の授業はおやすみなさい。


「起きろ総悟。部活行くぞ」
「チッ…あんたですかィ。悪いんですが今日は腹が痛いんで部活は休ませてもらいまさァ」
「嘘つけ。それからテメエ昼間のメールはどういう事か説明しろコラ」


何かもう面倒くさい。嫌々素振りを繰り返してたら野郎に真面目に部活をしろと怒鳴られてしまった(あれ?今日同じ事があったようななかったような)早く帰りたい。幸子は今頃何しているんだろう?………、


「ちょっと野暮用があるんで帰らせてもらいまさァ!」
「待てコルアァアァアア!」


結局逃げ出す事はできず最後まで部活に出るはめになった。むしゃくしゃするのでとりあえず山崎をボッコボコにしたら少しだけ気分がはれた。


「おかえりなさいっ」


玄関を開けて一番に俺を出迎えてくれたのは幸子の笑顔。家の中は幸子の好きなカレーのにおいでいっぱいだった。


「今日の晩ご飯は私が作ったんだよ」
「あれ?今日の食事当番はあいつじゃなかったんですかィ」
「だってトシ兄にやらせたら全部マヨネーズになるし。早くご飯食べよう」


晩ご飯はみんなで食べる。それが近藤家の掟である。まあそんなもん、幸子がいなかったらとっくにこのテーブルは戦場になっていただろうが。
夜。布団に入ってみるもののなかなか寝付けない。兄貴達の死体を数えてもやっぱり眠れない。仕方がないので今夜も幸子のベッドに潜り込む。もそもそ布団を被ると、ぼんやりと寝ぼける幸子と目があった。


「…ふぇ?総悟…?」
「幸子、おやすみなせェ」
「ん、おやすみなさい…」



おやすみ。
幸子、今夜も良い夢を。



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