「金を出せ!抵抗すると撃つぞコルァアア!!」


放課後に夕飯の買い物をするため訪れた大江戸ストア。平日の夕方にしては人の少ない店内に、銃を持った強盗達が現れた。


「幸子、面倒臭ェんで帰りやしょう」
「えぇえぇええ!?」


「そこ!静かにしろ!」銃を向けられ、慌てて私達は口を閉じる。
強盗の指示で人質は一カ所に集められた。銀兄達が盾になるように私を隠す。総悟はしっかりと私の手を握ってくれた。みんながいるから、安心した。


「ほら、このキャベツ投げつけてやりやしょうぜ」
「総悟、お前少し黙ってろ」
「オイ銀時、相手は何人いるか分かるか?」
「レジに一人、ドアの前に一人、俺達見張んのに二人」
「四人か、…よし。幸子は下がってな」
「晋兄っ、大人しくしてなよ」


相手は拳銃を持っているし、人質は私達だけじゃない(うちの兄弟なら勝てそうな気がするけれど)ここは下手に動かない方がいい。


「お前ら!さっきから何ブツブツ喋ってやがる!」
「「「「「すんまっせーん」」」」」


人質になって数分後、遠くからサイレンの音が聞こえて来た。
その音に反応した強盗達は慌てふためき始める。その間にも外はパトカーで完全に包囲された。


『マイクテスマイクテス!強盗の皆さーん!聞こえますかー!』
「マズイぞオイ!サツだ!」
『大人しく人質を解放しないと、正義の味方!この近藤勲が成敗しまーす!』
「見てあれ!お父さんだよ!」


お父さんが助けに来た!外のスピーカーから聞こえる父、勲の声に思わず反応すると、皆の顔色が一気に変わっていく。もしかしてもしかしなくても、今マズイ事言ったのだろうか。
自分の言葉の重大さに気付く前に、カチャリと銃口が頭に向けられた。


「お前、あのゴリラの娘か」
「そ、そんな事私言いました?」
「とぼけんなァア!!」


後ろから羽交い締めにされて銃を突き付けられる。今世紀最大級にヤバいんじゃないかなコレ。


「あんのクソ親父!人質いるの分かってんのかコノヤロー!」
「ハイハイ!俺も娘だ。代わりに人質になってやらァ」
「だいたい強盗なら銀行行け!何でスーパー?やる事が小せェんだよこのチンカス!」
「ウルセェエエ!!!」


銀兄達のふざけてるとしか思えない態度に、強盗達の剣幕はさらに酷くなる。
人が捕まってるというのに何考えてんだコイツら!私が死んだら一生恨んでやるんだからバカ!


「……………オイ」


すると今まで黙っていた総悟が口を開いた。


「幸子を人質にするたァいい度胸ですねィ」
「なっ!?」
「――地獄見してやりまさァ!」
「ヒィイイィイ!」


総悟の真っ黒なオーラに、後ろの強盗達がたじろいたのが分かった。私はその隙をついて強盗の拘束を逃れる。


「今だ!」
「行くぞ!テメェら!」
「命令してんじゃねぇよ天パ!」
「死になせェエエ!!」


瞬間、兄弟全員いっせいに強盗に突進していった。
野菜売り場の大根を振り上げて。


「「「「うおぉおぉお!」」」」


そこには、四人の侍がいた。



伝説の近藤兄弟
(次の日、私達兄弟は新聞の見出しを飾った)

end


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