同じクラスの河上万斉が一緒にバンド組むでござるとしつこく誘ってくる。自慢じゃないが、俺は楽器全般一通りこなした。その辺のバンドマンなんかより腕が立つ自信はある。だからといってバンドをやるかどうかは別の話だ。正直面倒臭い。
その万斉が何故か家にやって来た。別に遊びに来たなんて楽しいノリじゃない。バンドの話をしようと勝手に俺について来たのだ。


「か、かかか河上先輩っ、いらっしゃい!」
「幸子殿、邪魔するでござるよ」


家に上がり込んだ万斉の顔を見た瞬間、幸子の顔が一気に紅潮した。何だ。何で万斉の事知ってるんだ。何だってそんなに恥ずかしそうにしてるんだ。サングラスをしてても分かる万斉の満足げな顔に無性に腹が立った。


「万斉、帰れ」
「拙者はバンドの話をしに来たでござる、まだ何も…、」
「バンドはやらねぇ、帰れ」
「晋助、主も大概に分かりやすい男でござるな」


今日のところは帰るでござる。そう言って万斉は帰って行った。帰れ帰れ。二度と来るな。


「オイ、まさか幸子、万斉の事好きとか言わねぇよな」
「ち、違うよ!」


幸子は、昨年の文化祭で万斉のバンドのライブを見てファンになったと言う。別に恋愛対象ではないらしい。そうか、なら良かったと言いたいところだが、万斉を思い出してぽわんとする幸子を見て余計に苛立った。絶対アイツとバンドなんか組まねぇ。





「あれ、幸子まだ帰ってねぇの?」


次の日の夕方、帰りの遅い幸子を俺達が心配し始めた頃、銀時のスクーターとは違う大型バイクの音が家の前で止まった。まさかと思って外に出ると、やはり万斉のバイク。そしてそのバイクの後に跨がる幸子がいた。ちょっと待てコルァ。どうなってやがる。


「送ってもらっちゃってすいません、河上先輩」
「こんな時間に女子一人で出歩くのは危険でござるよ」
「あっ、ありがとうございます」


玄関先に突っ立つ俺に気付きもしない万斉は(もしかして俺が見てるの気付いてやってんのか?)何度もお礼を言う幸子をバイクから下ろしてそのまま立ち去った。俺は全く展開について行けない。


「あ、晋兄!ただいまー」
「何で万斉のバイクなんかに乗ってやがる」
「スーパーで買い物してたら遅くなっちゃって、偶然会った河上先輩が家まで送ってくれたの」


本当に万斉には一切合切恋愛感情は微塵も感じないんだなと、俺は必死に幸子に確認した。そんな俺を見て、幸子は不思議そうに頷く。それから思いついたように呟いた。


「でも、バンドマンってカッコイイよねー」


幸子の言葉を聞いた俺は、ポケットに入れていた携帯を取り出して通話履歴から電話をかけた。


「オイ万斉、バンド組んでやらァ」


こうして、バンド「鬼兵隊」は結成されたのであった。



バンドしようぜ!
(メインボーカルは俺だ)(好きにするでござるよ)

end


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