「幸子はまっこと可愛いのぉ〜」
「私ね、大きくなったらたっちゃんのお嫁さんになる!」
「おんしがボインのないすばでぃーな女子になったら考えちゃるきに」
「うんっ」
「テメー何言っちゃってんの!?銀さん許さないからねお兄ちゃん認めないからね!」


銀兄の同級生で幼馴染みの坂本辰馬は、私にとってもう一人のお兄ちゃんのような存在。小さかった私は、たっちゃんたっちゃんとひたすら後を追い掛け回した。そんな私を、たっちゃんは邪険にする事なく、いつも優しく相手してくれた。


「幸子、おんしを甲子園に連れて行くぜよ」
「こうしえん?」
「アッハッハ!分からんならよかよか」


そう言って、たっちゃんは大きな手でわしゃわしゃと私の頭を撫でる。そんなたっちゃんが私は大好きだった。

たっちゃんは私の初恋の人。





私が中学に上がる頃、たっちゃんと銀兄は大学生。大きくなるにつれて、私は少しずつたっちゃんの嘘に気付き始めた。
甲子園に連れて行くと言ったたっちゃんは、野球部にすら入ってなかったらしい。大学生になったたっちゃんが、知らない女の子と歩いているところを何度も見た。
「可愛いのー」とか「大好きじゃよ」とか、今思えば子供扱いされていた事くらい私にも分かる。


「は?会社起こす?」
「わしゃぁ世界を見に行くぜよ。金時も一緒に来んか?」
「銀時だっつってんだろーがモジャモジャ!」
「アッハッハ!」


それから暫くして、たっちゃんは大学を中退して日本を発った。その後会社を起こしたたっちゃんは、今じゃ世界中を飛び回っている社長。私は高校生になったけど、ボインでもなければナイスバディーでもない。
私の想いは、叶う事なく消えた。


「幸子、元気での」
「たっちゃん、あのね、」
「ん?」
「……ううん、何でもない。――いってらっしゃい」


今でも時々手紙やメールが届く。きっとたっちゃんは、同じ空の下で、また同じように笑っていると思う。

さよなら、たっちゃん。

さよなら、私の初恋。



初恋
(スマンのォ)(大切だからこそ、応える事は出来んのじゃ)

end





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辰馬はいつか再登場させるぜ!


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