「幸子、一生のお願いがあるんだけど…」
そう言って、銀兄は私の手をぎゅっと握る。いつになく真剣な眼差しの銀兄に、私はただ頷く事しかできなかった。
「――なぁ、幸子」
「何?」
「俺、…もう死んでもいいわー」
銀兄の締まりのないその顔は、いつもの五割増し格好悪く見えた。
「…………しねば?」
「オィイイ!最近冷た過ぎるぞお前!」
キラキラ輝くケーキ。色彩やかなフルーツ。広がる甘い香り。
本日、私と銀兄は巷で話題のスイーツパラダイスに来ている。雑誌でも取り上げられるほど有名なこの店の中は、甘い物を求める女の子達で賑わっていた。(そう言えば妙ちゃんが来たいって言ってたなぁ)
そしてここにも、糖分に飢えた哀れな男が一人。
「銀兄が一生のお願いって言うから何かと思ったらこんな事!?」
「バッカおま、こんなとこ男一人で入れるかっつーの!」
「知るかァア!!」
こうして銀兄は、一生のお願いを簡単に使い果たした。別に普通に頼まれても一緒に行ってあげたのにとは敢えて言わない事にする。
「ヤベー、幸せすぎて涙出るわ」
「オッサンじゃん」
でも本当に嬉しそうにケーキを頬張る銀兄に、思わず私も笑顔になる。やっぱり来て良かったかもしれない。
――だから、
「また二人だけで来ようね、お兄ちゃん」
「〜〜っ!?」
銀兄とデート
(ちょ、お前それ反則だろ)(わ!ケーキおいしい!)(可愛すぎて死ぬ)
end