頓所に向かう帰り道、口笛を吹きながら私の隣を歩く沖田さんは、どうやらとっても機嫌が良いらしい。今日は珍しくちゃんと仕事をしていたし、妙に楽しそうな沖田さんは物凄く不気味だ。明日は槍でも降るんじゃないかこれ。


「何でそんなに楽しそうなんですか?」
「さあな」
「何か良い事ありました?」
「さあな」


何だか分からないが、今日はいたぶられなくてすみそうだ。少なくとも、縄で縛られて逆さ吊りにされたり、地面に埋められたり、石を足に括り付けられて池に沈められたりはしないだろう。
入隊当初から、何が気に入ったのか気に入らないのか、私を奴隷扱いする沖田さん。上司の玩具である私は常にデンジャラスな毎日を過ごしている。このまま心労でハゲるんじゃないかと思う。
嗚呼、やっぱり平和が一番だ。


「沖田さんが楽しいなら、私も楽しいです」
「………ふーん」


私も沖田さんの真似をして口笛を吹いてみたけれど、ひゅーひゅー掠れた息が漏れるだけでちっとも音が出ない。沖田さんはあんなにたやすく吹いていると言うのに。項垂れる私を、沖田さんは馬鹿にしたように見下して笑った。


「下手くそ」
「ど、どうせ下手ですよ!」
「こうやって口を窄めて、息を吹くだけで良いんすぜ」


ほら、と沖田さんはぐっと顔を近付けてきた。急に距離が縮まった沖田さんの大きな瞳に心臓がびくりと跳ね上がる。恥ずかしくて顔が火照る。沖田さんにさとられたくなくて、私は慌てて口笛を吹く事に意識を集中した。


「さっさと帰りやしょう、牝豚なまえ」


不意に唇に何か柔らかいものが触れた。それが何だったのか気付く前に、沖田さんは私を置いてちゃっちゃか歩き出した。


「お、おおおお沖田さん!!」
「おっと早く帰らねェとドラマの再放送に間に合いやせん」


だから何でそんなに機嫌が良いんですか沖田隊長。



ピースオブラブ
(やっぱり平和が一番だ)

end


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