辰馬とこんなふうに身体を重ねるようになったのはいつからだったろうと考えた。
 子供の頃からいつも一緒にいた銀時達は当然私を女の子として扱ってくれた事なんてなかったし、もちろん私もそれを望まなかった。でも辰馬はがさつで男勝りな私を初めから女として見た。私はそれが嫌で嫌で恥ずかしくてたまらなかったけれど、それでも辰馬は何の躊躇もなく勝手に私の中に侵入してきた。最初はあった違和感も次第に気持ち良いものに変わっていったのはやっぱり嬉しかったからだと思う。侍として生きていこうと決めた私も所詮は女だったのだ。単に辰馬が女好きと言うのもあったし酒の勢いだとかそんなのも相俟って、いつしか私達の間には皆に言えない関係ができてしまっていた。

「おんしは強い女子じゃ」
「本当に?」
「おん。…愛しちゅう、なまえ」
「……本当?」

 女のくせにと言われたくなくて、銀時や皆の足を引っ張りたくなくて、私は意地になって刀を振り回した。臆病な自分を誰にも悟られぬよう必死に隠した。そんな私の気持ちをあっさり汲み取った辰馬に、結局私は今夜も満たされている。
 ふわふわと私の髪を撫でる辰馬の手が愛おしかった。このまま戦争が終わって生きるとか死ぬとかそんなの何も考えないで辰馬と二人一緒にいられたら幸せになれるのだろうかなんて夢見る腑抜けた自分と、先生の教えを守りたい誇りを捨てたくないと願う自分の心の葛藤に苦しめられた。不安を忘れるためにまた辰馬の腕の中に逃げ込む。悪循環を繰り返し続ける私はなんて愚かな女に成り下がった事だろう。

「それでよか。おんしがしたいように生きるんが本物の侍じゃき」

 庭に咲いていた花を一輪部屋に飾ってみた。急にしおらしい事をしだした私に高杉は何故か苛立っていたけど正直自分でもどうしてこんな事したのか分からない。名前も知らない綺麗な花を見て、私は一人嘲笑った。

「……馬鹿みたい」

 辰馬は宙に消えた。それこそ自分がしたいように生きるため。脱退が決まり辰馬はあっという間に私の前からいなくなった。今となっては結局辰馬が私に何を求めていたのかすら分からないまま。
 さて。そんな事よりも私はこれからどうしたらいいのだろう。私にはもう自分の力で立て直す事なんてできない。侍だと息巻いてた私も女の幸せを求めた私も、とっくの昔に殺されてしまっていたのだから。

 私は、結局何が欲しかったのか(もう分かりたくもないわ)


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -