「好き、せんせ……好きです」


あーあ馬鹿な子だなぁと思った。恥ずかしそうに顔を赤らめながら涙目で俺を見るなまえは俺の生徒で、俺はコイツの担任だ。
入学したときから俺の受け持つクラスの一人だったなまえは、乱暴だけど頭がよくて泣き虫だけどかわいくて優しくてクラスの人気者で、本当は俺だってお前が好きだったさ。二年間、そうやってお前を見てきたんだ。俺がどれだけお前の事を思ってるか聞かせてやりたい。でもな。


「まがりなりにも銀さん、先生なんだよねー」
「だ、だって!」
「賢いなまえちゃんなら分かるだろ」


知ってるよ。お前が俺を好きな事くらい、仕種見てりゃ誰だって分かる。多分みんな気付いてる。
大体十七歳っつったら青春真っ盛りじゃねぇか。今こんなオッサンにうつつを抜かしてる場合じゃないだろうが。


「わ、分かってるよ、銀ちゃんがマダオな事くらい」
「糖尿病予備軍で甲斐性なしの駄目オヤジだよ…あれ自分で言って悲しくなってきたんだけど」


終いには泣き出したなまえの頭を撫でてやる。このまま抱きしめてキスしてぐちゃぐちゃにしてしまいたい。でも駄目だ。ストップストップ戻って来い大人な俺。
そう俺は教師で大人で、お前は子供。ずるい大人は、素直に感情をぶつける方法を忘れてしまった。子供ってのは恐ろしく純粋で、どんな障害もお構いなしに突進してくる。そんななまえを受け入れる事はできない。今は。


「なまえさ、」


もし一年経ってお前が無事卒業できて、それでもまだ俺の事好きだって言うなら、また今日みたく俺に会いに来てくれよ、な。
その一年の間にお前が誰を好きになろうと構わない。最悪多串くんや総一郎くんに気持ちが移ったっていい。それが俺に与えられた枷だというのなら全て受け止めてやろうじゃねぇか。
でも俺は待つ。待ってるから。


「今は、……ごめんな」



愛故にさようなら
(一年後、約束通りお前は俺のところにやって来た)(馬鹿みたいに涙が出た)

end


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