身長ばかり無駄に育って、中身は泣き虫の子供のまま。そのせいか、一つしか歳の違わないはずの彼女が、ずっと大人に見えた。
始めはただ憧れていた。尊敬する先輩の一人だった。でもいつしかその思いは膨らんでいって、俺は彼女を好きになっていたのだ。
だから先輩、俺をおいて行かないでくださいよ。
「卒業おめでとうございます、みょうじ先輩」
「ありがとう!長太郎」
春が来た。まだ少し肌寒い三月。俺は今年三年生になる。でもそんな事、今はどうでもいい。
みょうじ先輩が卒業してしまう。みょうじ先輩が俺のそばからいなくなってしまう。俺はまだ彼女に何もしていない。俺の気持ち、何も伝えられていない。
「それじゃ、ばいばい、長太郎」
いつもより長めのスカートの先輩が(卒業式だから正装しいてるらしい)大きく、大きく、手を振ってる。
「部活頑張ってね!」
叫んでる。
「ぜったい全国せーはしてね!」
俺に。俺だけに。
「先輩!」
涙が、溢れてきた。
「みょうじせ…んぱ…っ」
俺はみょうじ先輩に一度もかっこいい姿を見せる事ができなかった。試合でも、練習でも、かっこいいところを見せたくて、空回りして。彼女に全然男らしいところを見せられなかった。
今だって涙が止まらなくて、周りの目も気にせず、子供みたいにおんおん泣いている。そんな俺を残し、振り返る事なくみょうじ先輩は歩いて行く。俺は彼女を引き止める事すらできないのだ。
結局最後まで、俺はなきむしけむしのままだった。
なきむしけむし
(ばいばい)
end
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中学生のときに書いたやつを修正してみた。