仕立屋


町は何やら不穏な空気が漂っている…

どうやら何か事件がおこったらしい。


橋の前で潤斗を見かけた。

隣の女は、一体誰…?


落ち込んだ様子の潤斗に、寄り添う同じ髪色の美人な女。

緑の帯がとてもよく似合うよ…


ああ、あんな年上が好みなんだね。



「日付的に言ったら俺のが年下だしね…」



だけど、仕事は頑張らなきゃ。

鋏を片手に一生懸命。


もう涙がでない眼を赤くはらしながら、帯の修繕に精を出す…





町はにわかに騒ぎ始めた。再び事件があったらしい…

さすがにこう立て続けに起きるとね。


足りなくなった糸や布を買いに行った帰り、かんざし屋で潤斗を見かけた。

隣の女は、一体誰…?



同い年程の女の子に黄色いかんざし買い与えて、少し辛そうに笑って…


一体俺をどうしようとしてるんだい?本当に見境がないんだね。



「潤斗も辛いんだよね、早く帰っておいで…」



だけど、仕事は頑張らなきゃ。

鋏を片手に一生懸命。


鋏の色、こんなだったっけ?

今日も仕事に精を出す…



ようやく仕事もひと段落した…


会いに来てくれないのなら、俺から会いに行くよ。


赤い着物 緑の帯 黄色いかんざしを髪に挿して…


男がする様な格好じゃないけど、潤斗の好みになれるならどうって事もない。

どう?綺麗だろう?






今日は町中が大騒ぎだ。


今度は男が殺されて、これで家族四人が全て殺されたらしい。

幸せそうで、まさに家族そのものだったと聞いた。



「それにしても酷いよね、『はじめましてこんにちは』なんてさ、まぁそういうのが好きなのは知ってるけどさ…」


「まるで他人の様な言い様だな、たわけが。」


「それはさすがに俺も思った。

あの接し方まるで他人みたいじゃ……」


「? どうかしたか?」



ダケド、仕事ハ頑張ラナキャ



「いいや、何でもないよ。」



鋏を片手に一生懸命。

赤く染まった裁縫鋏は、研げば研ぐほどよく切れる。



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