黄ノ国の王
俺と潤斗は国中の期待の中、生まれた双子。
けど、俺が物心つく頃には俺は王で、潤斗は召使だった。
ここは情なんて関係なくて、身分だけが物を言う世界。
だから、城に使えている召使は俺や両親の機嫌を損ねたりしないよう、すごく気を使う。
気に食わなかったらすぐ殺されるからね。
(この前の奴は本当にムカついたすぐビクビクしてたし)
「飯じゃ、早く来んしゃい」
「分かったよ」
だから、遠慮無く話し掛けてくれる潤斗にひかれたのかも知れない。
「どうしたんじゃ?」
「ちょっとね」
それから、両親に頼んで潤斗を俺付きの召使にしてもらった。
その時両親は顔を歪めたが、すぐに了承してくれた。
「久しぶりに昔の思い出に浸ってたんだ」
「ほぅ、良い思い出はあったか?」
「んー… あ、青の国の王子様に会った事とか」
「随分と最近の事じゃな」
口を手で被ってクツクツと笑う潤斗の横顔を見て、胸がツキッと痛くなる。
この前の舞踏会で1回会ったぐらいの人より、潤斗と居た時間の方が比べられない程長いのに、潤斗は顔色一つ変えないで「それは良かったのぉ」と笑う。
潤斗は詐欺師とか言われるけど、俺の前では素になる。
だから、この笑いが本心なのが分かる。分かるから、余計に胸が痛んだ。
「精市?」
「いや…」
潤斗を俺付きの召使にして数年経った時、医者に聞いたんだ。
俺と潤斗は双子の兄弟だって。
両親が顔を歪ました理由が分かったと同時に、ものすごい衝撃を覚えた。
俺が唯一心を広げられて、1番仲が良くて…
愛した人が、兄弟だって事に
「へぇ、今日は和食か」
「前に精市が食べたいって言ってたからのぉ」
俺の思いを知ってか知らずか、潤斗は「笑って」と言った。
だから俺は笑う。
何も知らないふりをして。
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