立海の


立海という町の片隅にある、仕立屋の若き主人。

気立てのよさと確かな腕、さらにその容姿で近所でも評判の青年。


そんな彼の悩みごとは、愛する潤斗の浮気症。



「まったくさ、俺というものがありながら家に帰って来やしないんだよ」


「またか…

正式な恋仲が居るというのに怪しからんな!一度俺が…」


「いいよ、そんな事しなくて。

何度も言うけど、ちゃんと愛し合ってるんだ。
それだけで俺は十分だよ」



確かに帰って来ないのは辛い…


だけど、仕事は頑張らなきゃ。

鋏を片手に一生懸命。


母の形見の裁縫鋏は、研げば研ぐほどよく切れる。





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今日も町はいつも通りの穏やかで平和な日常。

時折擦れ違う友人や後輩と世間話やたわいない話をして別れて大通りを歩けば、潤斗を見かけた。


隣の女は、一体誰…?


赤い着物がよく似合う、長い髪の美しい女と仲むつまじく歩くその姿に堪えきれず、その場所をすぐ離れた。



「、分かってはいたけど…やっぱり辛いな…」



だけど、仕事は頑張らなきゃ。

鋏を片手に一生懸命。


頬を涙で濡らしながら、着物の縫直しに残っているだけの精を出す…



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