捨てた過去
肖像画を燃やした。
昔の『僕』に関しての最後の品だった。
これで『僕』は全て捨て去った事になる。
誰しもが見捨てたあの頃の事は、早く忘れたい…
「潤斗君…?」
傍らの紳士な男に抱き着いてキスをねだる。
驚きながらも優しく笑ってキスをしてくれた彼は、かつて『僕』を捨てた幼馴染みだ。
「ヒロシ、今日はヒロシが抱いてくれんか?」
「……ええ、私でよければ」
後ろからズルイとかじゃあ明日は俺だとか聞こえて、笑いかけてからもう一度強く抱き着く。
早く…早くあの頃の自分を忘れたい。
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ある日は新しく来た奴、ある日は何度目かの奴、ある日は前回と同じ奴…
そうやって、誰彼構わずに抱かれるこの生活は今までも、これからも続く。
独りぼっちだった十数年間を埋める様に…
「潤斗?どうしたんだよぃ」
ベランダで空を見ていれば、部屋に入って来たブンタに声をかけられた。
「んー、いや、堕落っちゅーんか?
なんつーか、神に逆らっとるなーとか思ってのぅ」
それを言えば、今更だろと笑われた。
それは自分でも思ったんけどな…
「大丈ー夫だって」
「?」
いつの間にか隣に居たブンタに頭をパシパシ叩かれる。
うん、ちょっと痛い…
「ここに居る奴らはお前の事が大好きで大切なんだよぃ
だから、潤斗が気に病む必要何かねぇ」
「…おん。ありがとな」
「ほら冷えてんじゃねぇか。
俺が体ん中から暑くなる程暖めてやるよぃ」
「ブンちゃんのエッチ」
「お互い様だろぃ」
それもそうだと笑って、室内に入る。
入る時、庭の隅の方にヒロシが居た気がするんじゃが…
まぁ、気のせいじゃろ。
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