銀猫×What an ordinary ending?



俺、仁王潤斗は困っとった。

これ以上無いぐらいにかーなーり、困っとった。



「ここ…何処じゃ…?!」



そう。つまりは迷子。


東京方面の中学校で行った準レギュラー達の練習試合のスケットとして参加していた潤斗は、解散した後まだ日も高かったこともあって、皆と一緒に帰らずにその辺を散策していた。

が、細い道などを通って行くうちに、いつの間にか住宅地に入ってしまったらしく、駅の面影など何処にも無い。


しかも、本人は何も考えずにここまでの道のりを歩いて来た為、尚更帰れる訳が無い。



「(やっぱり、駅で現地解散した後素直に帰っとれば良かった…)」



今更歎いたって後の祭。


仕方なく携帯の道案内アプリを起動させようと携帯を開けば、画面は真っ暗。

一瞬電源が切れたのかと焦ったが、そういえば電源を切っていたのだと思い出した。



「………ι」



電源を着けたは良いが、携帯には軽く50件は行くのではないかという程の自分の部の部長とマネージャーからの着信とメールが着ていた。

とりあえず今この場で正直に「迷子です。」なんて言ったら説教は確実。


携帯の充電なども考え、「家に帰ったら連絡する」とだけメールを送って即座に携帯の電源を切った。

きっとすぐに電話がかかってくると思うから…



「ま、自分の足でなんとかするかのぅ」



まだ日は高い。


そう意気込んで来た道に足を進める潤斗だが、それが出来たら迷子なんて事態に陥っていない。





---------------





「どーすっかのぅ…」



当然駅に着ける訳でも無く、更に迷子になる始末…


近くの神社の様な場所へ向かう階段の途中に座り込み、空を見上げる。

前の道路に誰か通ったら聞いてみようと思ってはいるが、今までに人は通らなかった上、階段を上って神社の様な場所にも行ってみたが、残念ながら普段は無人らしく、誰も居なかった…



「(暗くなってきたしな… これ絶対帰ってから2人に連絡したら怒られる)」



軽い現実逃避中の最中、神社の様な場所の奥の雑木林からガッ ガッと何やら木を蹴る様な音が階段まで聞こえた。


一瞬ビクッとした潤斗だったが、人が居るのかと音の方へ…








「ん、じゃーな」



部活が終わり、部員達と別れていつもの家への道を歩く彼は日向ミズキ。



「(遅くなったな…
今日は家に帰らずにそのまま行くか)」



ミズキは携帯で時間を確認すると、住宅地をぬけその先にある雑木林の中へ入って行く。



「今日はこれかな?」



雑木林の中に数ある木の内の一本の前に立ち、近くに鞄と脱いだ制服を置き、いつもバスケをする時の様な軽装になる。



「さて…」



軽く準備運動を済ませ、構えるとそのまま木を蹴る。



ガサッ「!」



それから数分後だった。

潤斗が音を聞きミズキの元へ来たのは…



「…………」


「…………」



人が来るなんて珍しいな… しかも銀髪。

美人さん… 綺麗な黒髪を見たのは久々じゃ。


それぞれに思う事があり、2人の間に沈黙が流れる中、耐え切れなかった潤斗が口を開いた。



「……ストレス発散?」


「…趣味のキックボクシングの練習だ」



小首を傾げてそう聞いた潤斗に、とりあえず素直に答えておく。



「キックボクシング…」


「もしかして知らないか?」



まだマイナーだもんな と説明でもしようとすれば、知ってるから大丈夫だと首を横に振る。



「なんか格好良いのぅ」


「じゃあお前もやるか?」


「いや、それは…ι」



ミズキの練習を暫く見ている内に、お互いに馬が合ったのか時々言葉を交わす2人。


主に潤斗が話題を振り、ミズキがその話題を広げる様に返すの繰り返し。

今まで話した学校の話や趣味の話… どれを取っても共通点の見付からない2人だが、騒がしくなくこのぐらいで話すのが合っているのは一緒。


ミズキが木を蹴る音もこの2人の間には穏やかに流れていく…



「そら、面倒な先輩、だなっ」


「じゃろ?ミズキん所はええのぅ、上がおらんくて」


「いや、俺らが1番上だと、色々と、あんだよ」



何個目かの話題で今日の分の練習量を終えたミズキは汗を拭くと、置いておいた制服を鞄に詰めだす。



「もう帰るんか?」


「まぁ明日も部活あるしな。お前もだろ?」


「……プピッ」


「(肯定…ってことか…?)」



完全に太陽が沈んだ空を見上げ、潤斗は仕方なしに自分も鞄を担ぎ道路に出たミズキを追う。



「潤斗」


「ん?」



何と無くそんな潤斗の姿が淋しげに見え、ミズキはポンポンと潤斗の頭を撫でた後、普段なかなか見せない笑みを浮かべ



「また会おうな」



その言葉に一瞬目を見開いた潤斗だが、すぐに嬉しそうに「プリッ」と頷く。



「じゃあな」



最後にクシャッと一撫でし、潤斗とは反対の方向に歩いて行くミズキの後ろ姿を暫く見てから、潤斗はミズキの名を大声で呼ぶ。



「ミズキーー!!」







「………ι」


結局、潤斗を駅まで送って行く事になったミズキ。


来た道を引き返すことになるのに、何処か嬉しそうで…

それは潤斗も一緒。


周りから見れば、それは微笑ましい兄弟の様に見えた。









なんとも歯切れが悪い…(-"-;)

ミズキ君はうちの子を弟の様に可愛がってくれてれば嬉しいという妄想の産物です。ハイ。


相互、ありがとうございました!!

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