私情大幅込みの勧誘2
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時が過ぎるのは早く、先程4時限目の授業終了のチャイムが校舎に響いた。
「邑ー、一緒に食べようっ」
「ごめんみっちゃん!
さっき一緒に喋ってた他のクラスの子から誘われてて…
その子押しが強くて、ついOKしちゃったのぉ…」
「そうなの?なら私達は2人で食べてるから行って来て良いよ。」
「本当にごめんねぇ?」
「別に良いよ」
「さっちー」と前の方の席に座っている女子の元へ向かった数少ない友人を見送り、邑は教室を出た。
廊下で一度教室内を振り返ったが、潤斗を含めたレギュラーメンバーはもう居ない。
きっと友人と話している間に出て行ったんだろうと自己解決し、呼び出された通り屋上へ向かう。
(潤斗はもう4時限目の時点で居なかったから、恐らくサボり。)
「さーってとぉ…
このフラグ、どうしようかι」
屋上への階段の最中、邑は悩んでいた。
邑は様々な夢小説という物を読んで、更には自分で夢小説なんかを書いてしまうドリーマーと言う人種だった。
だからこそ、このフラグには悩む部分が多々ある。
「(俺、正直恋愛なんてリア充な事どーでもいーし…)」
マネージャーになるか、ならないか…
それは今後の展開で結構重要になってくるし、邑の場合は本性(俺様)を出すか、このミーハーのふりを突き通すかも選択肢に入って来る…
「悩んでも仕方ねぇか…」
彼女の呟きは、古びた屋上の扉を開ける音に掻き消された。
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「仁王先輩!」
「仁王ぅ!そこに居るのは分かってるんだぜぃ!」
邑が屋上へ向かうのと保々同時刻、中庭にある木の内の1本に向かい、潤斗の名を呼ぶワカメとガム… 否、赤也とブン太が居た。
「さっさと飯食おうぜぃ!次体育だろぃ?」
「え、そうなんスか?」
次の授業は2限続けての2クラス合同体育なので、それなりに早く食べ終え、さっさと着替えなくてはならない。
「何やるんスか?」
「んー この前ソフトボールが終わったから、多分テニスだな」
「良いッスね〜」
「テニス…」
普段体育にノリ気ではない潤斗も、テニスをやるというなら話は別。
「早く食おうぜぃ!」
「分かったナリ」
潤斗はパンをくわえながらノソノソと下りてきた。
隣の木から。
「Σ仁王先輩そっちだったんスか?!」
「あー!俺ら待ってたのに先食ってやがる!ズリィ!!」
「………
(何で俺こんなに責められとるんじゃ…?(泣))」
いつも迎えに来る柳生にもそのまま置いて行かれ、拗ねていれば赤也とブン太が来て先に食べてたのを責められて…
内心泣きそうにもなるが、1人で食べるよりはと思い、2人が昼ご飯を広げるのを待ってからモソモソとパンを食べるのを再開する。
つまりは、寂しかったのだ。
「柳生達はどうしたんじゃ?」
2人が来た事で忘れていたが、いつものメンバーはどうしたのか聞けば、2人の肩が少し跳ねる。
「えーと…」
「ほ、ほらっ、仁王が前に言ってた奴に会いに行ってるんだよぃ!」
「邑に?」
「え、あ、そっ、そうッス!」
「ほぅ…」
これでも潤斗は『コート上の詐欺師』。
赤也とブン太が何か隠しているのは分かる。
分かるのだが…
「仁王、確かこのチョコ好きだったろ」
「プリッ♪」
ブン太から貰ったチョコに、正直どうでも良くなった。
「(うまか…vV)」
「「(かわっ…!!///)」」
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