彼女の告げた真実
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「落ち着いたか?」
「うん…」
俺を慰めながら、邑は色んな事を教えてくれた。
まず、ここは… 否、この世界は『テニスの王子様』という世界で、邑はトリップして来たって事。
身体が違うのは、神様からの特典で、面白そうだったからじゃて。
(お前と違って自殺なんかしねぇんだよって嫌味言われた…
性格も変えれば良かったんに)
その次に、事故の本当の真実。
あの時【僕】を押したのは嘘の真実を話した九条じゃったらしい。
完璧な殺人未遂じゃ。
【僕】に何の恨みがあったんか…
そして今…
「ってかさ、お前本当にこの世界が俺らの居た世界と違うって気付かなかったのか?
明らかに違うだろ?
あんな風林火山とか使える奴居たか?」
邑に尋問にあってます。
「いや… 強い人が居るなぁって思っただけで…」
「バカだろ、お前バカだろ」
「生前の記憶もあったし、記憶の通り動きたいと思って鍛えてたら…
この前真田に6−1で勝った」
「Σ何やってんの?!
あー、もういい!もう何も言うなテニスバカ」
頭を抱えてしゃがみ込んだ邑になんて言ったらわからず、とりあえず謝ったら無言で叩かれた。
痛い…
「もう一度聞くが、お前は潤斗なんだよな…?」
「? おお…」
叩かれた部分を押さえていたら、いつの間にか顔を上げた邑に抱き着かれ、そんな事を聞かれた。
「俺の名前は?」
「美舞 邑」
「お前の所属部と役職は何だった?」
「テニス部… そんで、部長」
「じゃあ俺の役職は?」
「テニス部マネージャー(兼支配者)」
「もっかい言ってみ?」
「ごめんなさい」
それから邑は【僕】についての質問を幾つもしてきた。
俺が答える度に、まるで確かめる様に抱きしめられる力が強くなる…
「じゃあ… 自殺の原因は?」
邑の声音が変わった。
これは【僕】が虐められていた時にも聞いた声…
心配もあるけど、何処か怒りも含まれている声…
「誰も【僕】を責めなかったのが辛くて…
邑の居場所を奪ってしまいそうだった…」
それが、【僕】にとって1番辛かった…
「そうか…
それで、初華に感謝と謝罪を伝えて飛び降りたんだな?」
「うん…」
邑はまた「そうか…」と呟いて立ち上がる。
「邑…?」
そして…
「ラァアリアットォオォォオオ!!」
「Σへぶっ」
俺の首に綺麗なラリアットーを決めた。
「げほっ、かはっ…!」
もう十年以上受け取らんかったからキツイ…!
(ちゅーか、この身体で邑の攻撃を受けた事無か…)
「そんなちっぽけな理由で俺の目の前から居なくなったのかよ アーン?」
「………邑、跡部になっちょる…」
「んな事はどうでもいいんだよ。
お前なら分かるはずだ、大切な者が目の前からいなくなるのがどんなに辛いか…」
ぐいっと胸倉を掴まれて、邑の顔が近付く。
にしても、随分と可愛くなったのぅ 前はそこら辺の男顔負けの男前フェイスやったのに…
今ではそこら辺の女子顔負けの美少女じゃ。
「俺が話してるのに余計な事考えてんじゃねぇよ」
「ごめんなさい」
この俺様な性格は変わってないけど…
あ、話聞き流しとった
「まぁいい。色々と言いたい事はあるけど、これだけは言っておく…
俺の居場所はお前だ!
俺の居場所を奪いたくないなら、二度と俺の前からいなくなるな!
以上は必ず守れ。守れなかったら死刑だ」
邑はそう言って俺に教科書が入った段ボールを押し付けて、1人でさっさと備品室を出て言ってしまった…
「恐ろしいのぅ…」
言葉とは裏腹に、口元が吊り上がるのが分かる…
今、とてつもなく満ち足りた気分だ
段ボールを抱えて、邑の後を追う。
本人は無意識じゃろうが、邑の今の姿、邑の言葉…
邑の全てに、【僕】は救われた….
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