悲劇はいつでも電話から始まる
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「もう一人の女の子?

…あー、そういえば幼稚園まで一緒だったな…


確か名前は……そうそう、みーちゃんだ」




適当に晩飯用の野菜を切りながら、約1時間前の事を思い出す。


「みーちゃん…」


何度も復唱して思い出そうとするが、事故に遭った事だけしか思い出せない。

生前、15歳になっても直撃した脇腹に傷が残ってたし、その頃からテニスを始めたからとても印象に残っている。


でも、一緒に居たという少女の事は思い出せない…


昨日からずっと思い出そうとしていて、三人で手を繋いだ記憶は出て来たがそれだけ。

それ以上は何も出て来ない…


俺は本当に雅治さんの言う通り忘れてしまっているのだろうか…?


「…まぁ、邑でも詳しく思い出せないんじゃ、+13年生きとる俺が覚えてるわけなか」


そう片付けて三人分の晩御飯作りに専念するけど、気付けばまたその少女について考えてしまっている。


「……ちょっと焦げとる気がするが、別に味に変化は見当たらんし…」


そのせいでフライパンから少し煙が上がったが見なかった事にする。


気を取り直して出来た本日のおかずを大皿に盛り、邑と雅治さんが気まずい雰囲気を出してるから逃げてきた部屋へ向かう。

話終わってるかな、終わって邑の俺様全開だと良いな。…意味わからんけど



♪―♪♪―♪♪ ♪―



「この曲…部活の奴かの?」


この時間だったらもう家に着いとる頃じゃし、何か連絡が有ればメールのがええし…

携帯のあるリビングに戻ってディスプレイを見れば「柳生」の文字。

柳生ならよくメールじゃなくて電話を使うから、別に不自然じゃない。

むしろいつもの事じゃ


でも、凄く嫌な予感がする…


「柳生…?」


電話に出るまで凄く怖くて、今まで聞いたことがない柳生の切羽詰まった声にさらに怖くなって…



「―――!!」


告げられた事実に、頭が理解しようとしない


「…おん、すぐ行く…」


なんとか返した言葉は自分の声じゃない様に震えていて…


「とにかく邑に…いや、雅治さん…?」



また失ってしまうのではないかとパニックになる頭は、上手く動かなくて…


それは13年前、邑が僕の目の前から居なくなった時と同じ様な間隔だった






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