16.
トドロキショウト、バクゴウカツキ、ミドリヤイズク…
先頭を走っていく生徒の面々、見たことのない顔ばかりだった。
実況や先頭を走る彼らの口振りからしてそのほとんどがヒーロー科の生徒である。
私たちにはまったく手の付けられなかったロボたちを、凛とした少女が「チョロい」と評す。
その手にあるのは大砲だ、歪な痕が見える腹部の肌が徐々になだらかになっていくのを見る辺り、身体からああいうものを作りだせる個性なのだろう。
先陣切って走り去ったトドロキショウトウはあれを一瞬にして凍らせた。
バクゴウカツキは手から爆炎のようなものを出している。
巨大な鉄の塊に潰されたと言うのに、まったくの無傷だった2人組。
自分の身を守ることで必死だった入試では、まったく意識してみることのできなかった彼らの個性。
さすがヒーロー科に進学できた人間たちばかりだった。
私も父さんの個性だったら、あそこにいれたかもしれない
無い物ねだりだとは分かっている。けれど、そう思わずはいられなかった。
「うーん、やっぱり他の科は少ないなあ」
「…………」
上位に食い込んでいる面々に先生はそうぼやく。
実際、公開されている18位までの名前には全員、ヒーロー科のクラスが冠されている。
それらしいのは、下位でギリギリ滑り込んだ少女と、
「あ、人使くんいるね」
「はあ」
顔を知っていたのかという驚きと、そこには触れてほしくなかったという気まずさ。
こちらがまともな返事をしていないにもかかわらず、先生は画面に食いついたままだ。
よほど楽しみだったのだろうか。
自分の学校のイベントとはいえ、大して親しい友人もおらず、ヒーロー科の活躍に理不尽な不平不満が噴出するだけ。
スポーツだってもともと好きではないのだ。
ただ一つ違う事とすれば。
会場は相変わらず息継ぎする間もなく次への競技へと移ってゆく。
この駆け足具合は、ある意味雄英の売りだろう。
悪は待ってくれない、誰かがそう言っていた気がする。
残り時間わずか、きっと最高潮に達しているのであろう会場の声援。
他の病室もおなじように見ているのか、さまざまな雄叫びや黄色い声が聞こえてくる。
やはり、トップに躍り出ているのは轟・爆豪・緑谷と相変わらず。
間違いなく"次"があるのであろう争いに、やっぱり譲れないのだろう。
もう私の存在を忘れてるのではと思うほど、先生も盛り上がっていた。
『さっそく上位4チーム見てみよか!』
マイクの実況、カメラは全体のよく見える上空から、生徒の顔がよく見える位置に移る。
1位は安堵している様子の轟チーム、どうしても1位になると奮闘していた、2位の座に悔しがる爆豪チーム。
きっと彼ら以上に悔しがっているのであろう鉄哲チームが、映ると思った。
3位、心操チーム
見慣れた顔が、不敵な笑みを浮かべてそこにいた。
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