梅雨ちゃんの話 2

「あの子もヒーロー科志望なのね」
「性格はともかく、個性はピカイチだから」

マコちゃんとは中学からの仲だという彼女。
それでも緑谷ちゃんたち以上の親密なモノを感じるのは、同性だからか。
中学時代、マコちゃんを引っ張ってきたのも彼女で、必死に下剋上に勧誘しているらしい。

「食堂で彼女をよく見かけるのだけど、あなた以外にお友だちはいるの?」
「……あいつ、嫌われやすい性格してるのはわかるだろ」
「そうかしら。まっすぐでヒーローに向いているように見えるけれど」
「だからだよ」

まっすぐ過ぎる人間は嫌われるんだよ、特に多感な時期は
口をへの字にしながら彼女は言う。
たしかに、中学生といえば特に、多感な少年少女と揶揄される時代。
私もあまり交友関係に恵まれていた立場ではなかったから、なんとなく分かる。
きっとそのころからマコちゃんはそんな性格だったのかもしれない。
もしかしたら、ずっと昔から。

「マコちゃん、いじめられていたの?」
「いじめられてたっていうか、浮いてたんだよ」
「あなたも同じ類だったのね」

そう口に出せば、彼女はぎょっとした顔をする。

「分かるわ。私も、似たような経験があるから」
「……そう、意外」
「私、思った事はなんでも言っちゃうの」
「ああ…」

納得したようにそう声を漏らす彼女が、ほろりと涙を流したあの子と重なった。
私たちも彼女たちも似た者同士。
でも、二人はまだ"そこ"にいるように感じた。

「力になりたいわ」
「そう言ってくれるのはありがたいけど…」
「もう、二人だけの話じゃなくなってきてるんでしょう?」

そう言い切ってしまえば、彼女はさらに口をへの字に曲げてしまう。
しばらく黙り込んでしまうのに「どうかしら」と畳み掛けてみる。
彼女は、納得してい無さそうな顔で、「分かった」と答えた。


「そういえば、あなたの名前を聞いてなかったわ。なんていうの?」
「……稲妻、光」
「私のことは梅雨ちゃんと呼んで。よろしくね、光ちゃん」

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