まさかそんなベタな返答
赤いスポーツカーとカーチェイスを繰り広げながら、荒野を走り回った。
車体が大きく揺れるたび、車内から女子2人、男子1人、計3人分の悲鳴が上がる。
男子はもちろんラフ、女子の1人はミコだ。
そうしてもう1人。ミコと一緒にいた女の子で、名前は知らない。
ミコと距離の近い人物、しかも自分の姿をはっきり見られてしまった。
ラチェット辺りにチクチク言われるだろうことも考えると、バンブルビーは泣きたくなった。
だが仕方がない。
ノックアウトとだいぶ距離を離したところで、ラチェットに緊急信号を送った。
相次いで目前にグランドブリッジが現れ、大急ぎで飛び込む。
ノックアウトはそれ以上追ってはこなかった。
安堵しながら、3人を基地内に降ろして擬態を解く。
『バンブルビー、どうしたんだ』
「朝ね、ラフに偶然会ったからちょっと話してたんだ。そしたらとつぜんノックアウトが襲ってきたの! 偶然バンブルビーがいたから助かったんだけど…」
『いいや、ノックアウトのことではなく…』
『ミコ。その女の子は誰?』
アーシーに問われて、ようやくミコは己の背後に隠れている少女を見た。
黒いセミロングとぱっつんの前髪、例えるなら市松人形に似た少女。
自分よりはるかに大きい機体に見下ろされ、完全に気圧されている。
「えーっと、私の親友!」
『親友って…』
『もしかして、この前の"親友"か?』
「そう!」
「ミコ、なに話したの」
奇妙なイントネーションで話す少女に、それぞれ首を傾げる。
おそらく日本語訛りだが、ミコのものとは少し違う。
『おいなんだ、また新しい人間でも連れ込んで…』
なんの騒ぎだ、とトランスフォーマーたちをかき分けて姿を見せたラチェットは、その少女をみて完全にフリーズする。
だがなにより、少女の発した言葉に彼らは驚いた。
「あのときの救急車」
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