夏休み前A

「俺、お前のそういうトコ嫌い」
「はあ?」

突然の宣告に、思わず眉間にしわを寄せてしまう。
いや、君が私を嫌っているのは薄々知っていたけれど。
こうして面向かって言われると、ショックを通り越して苛立ちすら覚えてしまう。

「どういう意味?」
「この際だから言うよ。苗字ってさ、なんでも一人でやろうとするじゃん。俺としては面白くない」
「……なら私も正直に申し上げますが、心操くんにとって面白いかどうかは、ぶっちゃけ私には関係ないと思うのですが」

ピリ、と二人の間に電流のようなものが走った。
突然なにを言い出すかと思えば、さらに訳の分からないことを言い始める。
心操ってこんなキャラだったっけ、と思いながら、心持ち距離を離す。

「あー、"面白くない"ってのは言い方悪かったかな。俺が仕事を押し付けたのにそうやって女子一人が遅くまで残られると、なんていうかさ」
「……じゃあ、これから職員室行って"家でやってきます"って言ってくればいいわけ?」
「……うん」

「おもしろくない」と全面に書かれた顔で、心操はそう言う。
たぶん、私の顔にも同じことが書かれているだろう。

「分かった。じゃあ」
「…………」
「だからなんでついてくるわけ?!」
「最近不審者が出るんだってさ」
「で?」
「駅までぐらい良いだろ」

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