Third-Contact

「あっ。青島くん」

母親と姉の買い物につき合わされ、ひとりデパートをぶらぶら歩いていた時だった。
後ろから、まだ記憶に新しい声がした。
振り向けば、やはり苗字名前。
来ているのは、学校ではあまりみないカラフルで少しオシャレな服だ。

「あっ、お母さんたちが近くにいるかもしらないから、じゃあね!」

声をかけてごめんね、と言いたげな顔だった。

「ちょっと待てよ。お前、いま一人?」
「え?」

すぐにこの場を去ろうとした苗字を呼び止める。
一緒にアイスを食べないか誘うと、きょとんとした顔で瞬き返した。

色とりどりのそれが並べられているアイスケースを見る苗字の目。
よほど好きなのか、目移りしてあれこれと悩んでいるその顔も、とても嬉しそうに見えた。
が、自分から誘っておいて、めったに来ないアイス屋だ。
無難なアイスも一応あるが、今まで見たことのない色をしているアイスにも目を奪われる。

「なぁ、苗字のおすすめってある?」
「えっとね、あのシーズンフローバーかな。このまえ食べたんだけど、すごい美味しかった」
「へえ」

じゃあそれにする、というと、苗字はちょっと驚いた顔をした。


「苗字って、いつもなんの本読んでるの?」
「えっと、今読んでるのは『八分音符のプレリュード』っていう本」

屋上なら家族もそうそう現れないだろう。
アイスを食べながら、苗字とすこし話をした。
苗字は、アミに比べて性格が丸い。

「私の親、読書家でね。私もそうしなさいって、夏休みの課題図書ぜんぶ買ってきたの」
「ぜっ、ぜんぶ?!」
「うん。私の親、変でしょう?」

そうやってぜんぶ押し付けてくるの。
苗字は小さな声でそうつぶやいた。

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