Eighth-Contact

「苗字、おはよう!」
「あ。おはよう、青島くん」

登校中、学校の校門前。
苗字はいつも、俺が学校に着くころには席に座って本を読んでいた。
部活で早めに来るクラスメイトは、雨の日、教室で同じく本を読んでいる苗字を見たという。
その苗字が、俺と同じ時間にここにいる。

「新しいLBX、動かしてみた?」
「うん! すごい楽しかった!」

好きなモノを見るときの目。
楽しいと感じているときの目。
ずっと、苗字はあまり感動したりしない性格だと思っていた。
少なくとも、それを表に出したりはしない。
わずかに表情を歪ませたりするだけで。

けれど、違った。
苗字はコロコロと表情を変える。
楽しいこと、嬉しいことがあればすぐに笑う。
逆に、悲しいこと、辛いことがあれば、すぐに表情を暗くする。
ふと、楽しげにお喋りを続けていた苗字と目が合った。

「青島くんって、けっこう身長高いんだね」
「え? まあ、男だし」
「少し前までそんなに変わらなかった気がするんだけど…」

改めて苗字の目を見てみれば、たしかに俺より数センチ低いところにある。
肩を並べれば、俺は苗字のつむじを見ることができるけれど、苗字に俺のは見えそうにない。

「もう少し高くなれば、青島くんと同じ視線になれるのに」
「高くなればって、苗字はその身長でいいんじゃないかな」
「…でもなんか、置いてかれる気分になる」

すこし俯きかける苗字に、ドキッとする。
慌てて「置いてかないよ」と弁解する。

「そ、それにさ。女子は小さい方が可愛いって。絶対」
「なによカズ。まさか、苗字さんを自分好みに洗脳しようって魂胆じゃないでしょうね!」
「うわぁ?!」

真後ろから、低くとげのある声がする。
思わず飛びのけば、そこにはジト目でこちらをにらむアミがいた。

prev next
表紙に戻る
「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -