Snow White

鏡よ、鏡。世界で一番美しい女性はだあれ?
美しい王妃が、艶のある声で鏡に問う。鏡は「世界で一番美しいのは、白雪姫です」と答える
それまで自分が一番美しいと思っていた王妃は激怒し……

「なんでボクが一番かわいくないの〜? 狩人さん、白雪姫をやっつけちゃって!」

その王妃役に抜擢されたパンダくんは、プリプリ怒りながら狩人役のグリズリーさんに言いつけましたとさ。

今、しろくまカフェでは『白雪姫』の演劇練習をしている。もちろん、本格的なものではなく幼稚園児向けのようなもの……というのが“表向き”だ。
この企画を持ち上げたのは、パンダくんかわいすぎる!!と第二のリンリンになりかけている名前である。

「ね、ねぇ、名前ちゃん……」
「半田さん、なんですか?」
「なんでボクが王子役なのかな?」
「だめですか?」
「ダメって訳じゃないんだけど……」

演劇の話を持ち出したのは名前だが、配役の候補を上げたのもすべて名前で、細かい配役を除けばそれがほとんど通っている。
そして王子役の候補は終始一貫して半田さんだ。
(どこで聞きつけたのか、メイメイが白雪姫に立候補してきたのは別の話)

「おい、苗字!! しろくまとパンダが喧嘩してるぞ!」
「えええええ」

順調に進んでいたと思われる練習も、中盤の鏡の答えにパンダくんが本気で怒り始めたようだ。
鏡役のしろくまさんも、「台本だから」と怒り状態のパンダくんにも頑なに白雪姫を推している。
出番を待たされている小人役のコアリクイくんやラマさんたちは、暇そうに好きなものを食べ始めてしまい、ピゴセリス属三人組もペンギンカードをどうやって売るかの会談を始めてしまっている。
さてどうしよう
怒るパンダくんも可愛いと充電をしていた名前もそろそろ頭を抱え始めた頃、一人ドレスを着た女性がパンダくんとしろくまさんの間に入った。

「まぁまぁ、二人とも。喧嘩しないでコーヒーでもどうですか?」

元は質素な黄色いロングワンピースなのだが、上等品とまでは言わずともそれっぽく刺繍が施されている。
高級そうなコーヒーカップを乗せているおぼんもそれなりのものだ。
え、誰? という空気がカフェ内に流れる中、しろくまさんと名前は「あっ」と声を上げる。

「わあ、笹子さんチョー綺麗!」
「うん。すごい似合ってるね」
「そ、そうですか? 少し歩きにくいんですけど……」

名前がキャアキャアと声を上げ、女性の後に続いてやってきたエゾリスさんたちが「当然よ!」「なめないでちょうだい」と胸を張っていた。
さらにパンダくんとしろくまさんの喧嘩を聞きつけてパンダママまで続いてくるもんだから、パンダくんは「うわぁ〜」としろくまさんの後ろに隠れてしまう。

「よし! 白雪姫役の笹子さんの準備もできたので、もう一度最初からパパッとやっちゃいましょう!」

笹子さんの登場でスイッチが入ったのか、名前はごそごそと台本集をバックから取り出す。

「さ、笹子さんが白雪姫なの!?」
「そうですよ、当たり前じゃないですか!」

笹子さん以上にぴったりな人いるわけないです! 明らかに笹子さんに対する尊敬だけではない笑みを含む名前は、ラストの王子役の台本を半田さんに渡す。
小声で「半田さん、がんばってください!」と言った後、「準備お願いしまーす!」と舞台前のイスにいそいそと座り込んだ。
それに入れ替わって、笹子さんが笑顔で半田さんに言う。

「半田さん、よろしくお願いしますね」
「は、はい!」

(名前ちゃん、名前ちゃん)
(なあに、パンダくん?)
(あの二人、早くラブラブになればいいのにね)
(ね。早く告白しちゃえばいいのに、半田さん)


 ‐ ‐ ‐

『白い雪のプリンセスは』を聞いて思いついて、オープニングの「ボクにインビテーション」をBGMに。
書き終わって読み直したあと、ペンギンさんを出し忘れたのに私もびっくり。


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