第4Q
帝光中は文化祭が6月にあるらしい。入学して1ヶ月経った頃、文化祭の実行委員を決めると担任が言い出したことから発覚した。ちなみに言い出してから5分くらい経過した今も誰も手を挙げず、終いにはお前がやれよ云々の声が聞こえてくる。押し付け合うのは良くないと思うな、なんて他人事のように眺めていれば、くじ引きをすると言い出した。途端に上がるブーイングの嵐は先生も予想していたようで、内申点少し上げるという一言で少し治まった。いいのか悪いのか微妙なところだけど。ちなみに1年生は出し物は基本しないで、同窓会の人によるフリーマーケットの手伝いをする予定である。とはいっても、それは部活動に入っていない人だけで、部活動に入っている人は免除される。入っててよかった。


「3番と8番のくじ引いた奴はー?」


先生の言葉に手元の紙を見る。書かれてあるのはアヒル口。ではなく、数字の3だ。そう、さっき先生が聞いた、3番のくじを、私は今持っている。
待ってくださいお願いします。私が何をしたというんですか。絶望で打ちひしがれている私に、神様はとても無情だった。隣の席の元気のある男子生徒があろうことか手を挙げながら橙坂3番でーす!と言ったのだ。
ふざけるなよ貴様。ちょっと同じバスケ部で仲良いからってそんな裏切りが許されるとでも?
恨めしく思いながら彼を睨めば、ニヤニヤとこちらを見ていた。なんだその顔。裏切ったくせに謝罪もなくただニヤついているだけだと?抗議しようと口を開けば、それは別の声によって遮られた。


「8番は黄瀬か!じゃあ実行委員は橙坂と黄瀬で決まりだな!」


これのせいじゃないですか。頑張れよ!と担任が言った言葉を聞き、先ほどの彼の表情の意味が分かった。つまり彼は、私と黄瀬君が同じ実行委員となり、仕事をすることに関して面白そうと思ったから裏切ったらしい。笑いをこらえながら親指を立てている彼を見れば、大体私の推測は合っているだろう。そういう人だったんだなぁと初めて知ったため、驚いたが、それはそれ、これはこれだ。謝罪の一言は欲しい。まぁ確かに、ミーハーな私が顔を出して、黄瀬君と一緒の委員会だラッキー!なんて思ったりもしたけど。ちょっとだけね!分かった瞬間の女子が怖かった。


「じゃあ実行委員の2人は、今から委員会に行ってきてくれ!」

「えっ…」


黄瀬君とまだ一言も話したことないのに思わぬ所でハモってしまった。それもこれも、クラス全員がいる前で爆弾発言をした担任のせいなんだけとも。
なんでも、この時間に委員会の顔合わせや今後の予定等をするらしく、開始まで残り1分らしい。嘘だと言って?


「ってことで頑張れよ!」

「無理です!」


本日2回目のハモリである。なんて悠長なことを言っている暇も、考えている暇もなく、私と黄瀬君はダッシュで委員会が行われる教室に向かった。すれ違った先生に注意された気もするが、気がするで済ませておこう。


「遅れてっ、すみませんっ!」


2人揃って息を切らせながら教室に入ると、こちらを見ている全員が、ぎょっとした表情で固まっていた。そのことに責めるなら担任を責めろと言わんばかりに、さっき実行委員を決めて急いできたことを伝えれば、まだ先生が来ていないと言われた。そのことに安堵しつつ、私たちは自分のクラスのところの席についた。
後ろの席に座っている隣のクラスの女子が、ちょうど同じマネージャーのあっちゃんだったので安心した。彼女はさつきが体験入部の時に同じグループだったうちの1人で、私はあまり話したことがなかったから仲良くなるチャンスだ。


「お、黄瀬も橙坂も間に合ったな!」


がらりと音を立て教室に入ってきた担任を見て、固まった。え、ちょっとどういうこと?なんて思っていると、彼が委員会の担当だということが発覚した。しかも、自分が決めるのを直前にするため、時間も私たちに言ったものより5分ほど遅らせた時間を他の生徒に伝えていた。


「黄瀬君。」

「橙坂さん。」

「お疲れ様。」


黄瀬君とは今日が初めましてに近いのに、よくハモった。それもこれも、委員会の説明をする教師のせいなんだけど。
黄瀬君とは、同じ委員会だからという理由で、連絡先を交換した。そして、固い握手を交わし、これから先のことを考えて、労り合った。

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