エルザ | ナノ


▼ 25

どうしてこうなったのか。禊さんはゲラゲラと笑ってから、邪魔者は消えるだとか言ってどこかに飛んでいってしまった。何かカチリと音がしたような気がしてからディオの様子がおかしいな…と思っていたらあっさりマウントポジションをとられてしまっま。正直ヤバい。何で急にこんなことになったんだ。

「おい、聞いているのか。男でも作ったのか。男は嫌だとか結婚したくないだとか言っておいて」
「いや、禊さんは別…あ」

ああ、しまった。しかもしまったという感情を顔にも出していたのかディオの目つきがさらに悪くなる。

「誰だそれは」
「いや、別に」
「聞き慣れない名前だ。外国の男か」
「いやだからさ、別にそんなんじゃあないって。ってなんでこんな浮気したみたいな話になってんの?浮気じゃあないし、第一浮気とかする以前の関係だろそうだろ?」
「婚約者の浮気を責めて何が悪い」
「えー……」

ホントに何なんだ。随分とイライラが積もっているようだ。

「俺は婚約してから他の女に手を出していないぞ」
「それお前が自主的にやってるんじゃあなくて婚約しちゃって周りの目があるから自分の評価が下がらないようにそうしてるだけだろ!」
「それの何が悪い」
「いっそ清々しいなオイ!」

勝手に我慢してるくせに勝手にキレて八つ当たりかよ。なるほど発散相手がいないからキレてるわけか。ディオはフンと鼻を鳴らし、偉そうに言った。

「何とでも言え。自主的ではないにせよ浮気していない俺と、しているエルザならそっちの方が悪い」
「はぁ!?だからしてないっての。何?嫉妬?」

冗談半分でそういうと、嫉妬……と呟いたきり黙り込んでしまった。え、マジか。しばらく黙って考えていたディオが何度か頷き結論を出した。

「嫉妬していたらしい」
「は?マジに言ってる?」
「ああ、お前だけ他に男がいて好き勝手しているというのは不公平だろう」
「あ、そっち?」
「他に何がある」
「いや、まあ確かに」

てっきり禊さんに嫉妬したのかと思ったけど冷静に考えたらそれはない……か?

「続けるぞ」
「ああはいどうぞ」
「俺が他の女といるところを見られるとさっき言ったように評価が下がる」
「はあ」
「だからその男とは別れろ」
「あ″?いや、だから浮気じゃあないって言ってるじゃん?話し聞いてる?」
「ならその男に話したことを俺にも話せ」
「いやだからそれは無理。浮気じゃあないけど無理なもんは無理」

ドンドン顔が険しくなるディオにどうしたものかと考えようとしたが半分諦めてしまっている。

「なあもう無駄なことはやめようぜ。いくら言われても浮気じゃあないしさ……嫉妬深いとか聞いてないぜ」
「浮気じゃあないのならお前が俺の相手をしろ」
「ヤダよ!人の話聞けって!」
「婚約してどれだけ経った?半年程か?未だにキス一つしたことがない。手すら触れていない。男女が揃っていて何一つ起こらないなんてどうかしている!」
「いや、正常だって!健全なだけだから!大丈夫だからもうそろそろ離れろよ」

そうとうストレスが溜まってるのはよく分かった。コイツがこんなになるなんてメッタにない。うん。色々崩壊してる。

「イヤだ」
「お前なあ…。人肌恋しい季節なわけ?」
「少しぐらい触らせろ」
「もう本音しか出てないぞ」
「うるさい。クソッ。大体お前が浮気なんてするから」
「まーたそこに戻んのかよ。だからしてないって。ほら、この話はもう終わりだ」

起き上がろうと上体を起こしかけると、ディオにグイッと押されてソファーに逆戻りした。……そろそろキレて良いだろうかと口を開くとディオに塞がれる。

「ん!?」

ガブリと噛みつくようにキスされて、そのままガブガブと何度も何度も角度を変えて深さも段々と深くなっていく。ドンドンと胸板を叩くも、マウントをとられてしまっていてはどうにもならない。

「んぅ……む…や、」

首を振って嫌がってもまたすぐ塞がれる。ヤバい気持ち悪い。ねっとりと舌を絡められて吐き気のピークが訪れた。火事場の馬鹿力というやつで、ディオを突き飛ばしソファーに横たわったまま、身体をひねり床に吐いた。ディオも流石に呆然としていたし、自分でも驚いた。

「吐かなくてもいいだろう」
「いや、吐きたくてはいた訳じゃあねぇし、自分でもビックリしてるし、一番悪いのは無理矢理キスしてきたお前だろ」
「……」
「何か言ったら?」
「……」

一応モテ男なだけあってキスして吐かれたというのがショックなのか黙り込んでしまった。それはもうどうでもいいが取り合えず私の上から降りろ。と言うと、ディオは呆然としたまま、帰る。と小さく言って、出て行ってしまった。沈黙が続いていると、禊さんの笑い声が聞こえてきて、辺りを見るとバルコニーの方向から姿を現した。またゲラゲラと笑っている。来るのがおせぇよ。もう……疲れた。これからのことまた考え直さないと。

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