エルザ | ナノ


▼ 5

次の日。お母様に持たされたスコーンとジャムをつまみ食いしながら指定された場所を目指す。

『エルザちゃんお行儀が悪いぜ』
「まあまあ良いじゃあないですか。禊さんもお一つどうです?」
『もらうよ』
「行儀が悪いって言ったくせに自分もちゃんと食べるあたり禊さんらしいですね。はいどーぞ。…って、禊さんスタンドなのに食べるんですか?」
『セックス・ピストルズだって食べてただろ?別に食べる必要はないんだけど食べられないこともないんだ。味も分かるしね』

そう言ってモグモグとスコーンを食べ始めた禊さんを見ながら私ももう一つ食べ始める。そういえば今の状況ってスタンド使いじゃない人から見たらスコーンが浮いてるように見えるんだろうなー。まあ周囲に人はいないし、別に良いんだけど。

口の中のスコーンがなくなった頃、目的地が見えてきた。ジョジョが待っているのも見える。

「ん?」

よく見ると一人じゃあない。隣に女の子がいる。ジョジョと親しい女の子なんて一人しかいないじゃあないか…。その正体に気づいてもっとちゃんと身なりを整えてきたらよかったと後悔した。可愛い子を紹介してもらえるとわかっていたならもっと気合い入れてきたのに。本音を言えば今すぐにでも帰って着替えてきたいが、これ以上待たせるわけにもいかないだろう。仕方なくジョジョ達のもとへ向かう。

「待った?」
「そんなに待ってないよ。来てくれて良かった。もしかしてメモに気がつかなかったんじゃあないかって心配してたんだ」
「だったらもっとちゃんと時間を決めておいたら良かったのに」
「今度からはそうするよ。あのね、今日はエルザに紹介したい人がいるんだ」
「はじめまして、エリナ・ペンドルトンと言います」
「はじめましてエリナ。私はエルザ・エルドレット。エルザでいいよ、よろしくね」

握手を交わしながら挨拶をする。今気づいたが、もしかして私自分のこの世界での苗字を名乗ったの初めて?考えてみればそもそも自己紹介なんてことをした相手がジョジョとディオとエリナしかいないのだから当然なのかもしれない。うっはー私友達いなさすぎじゃね?とは言っってみたものの、別段気にしていない。そんなことよりも、だ。エリナちょっと可愛すぎない?ヤバくない?

「ジョジョにこんなに可愛らしいお友達がいたとはな」
「この間仲良くなったんだ。エルザはエリナには素なんだね」
「私は女の子には嘘は吐かないの。あ、でもエリナが嫌ならまともな口調で話すから言ってね」
「大丈夫。それが本当のエルザなんでしょう?だったら私は気にしないし、むしろそうやって普通に話してくれた方が私も話しやすいもの」
「ありがとうエリナ。君は可愛いだけじゃあなくって性格もいい素晴らしい女の子だということがよく分かったよ」

エリナの手を取り、真っ直ぐ見つめながらにこやかに言うと、エリナはキョトンとした顔をしてからおかしそうにクスクスと笑い始めた。そういえばこの時代って同性愛って即死刑じゃなかったっけ?軽々しく口説くのはやめた方が良かったかな?という考えがサッと頭をよぎったが、すぐに消えた。笑った顔が見れたから良いや。うん。だってすんごい可愛いもん。キラキラしてるもん。

「エリナは普通にしていても可愛いのに笑うともっと可愛いね。ずっと笑っていてほしいくらいだ」
「ふふふ。ありがとうエルザ。でもエルザだって凄く綺麗で、お話しするのも上手で…その黒髪もとっても神秘的で素敵だわ」
「ああ、エリナがそんな風に言ってくれたなら自信が持てるよ。実のところお父様もお母様も黒髪じゃあないのに私だけ黒髪だからあんまり好きじゃあなかったんだ」
「まあ、そうなの?勿体ないわ、こんなに綺麗でサラサラしていそうなのに。…触っても良い?」
「もちろん」

スッと頭を差し出すと、エリナの細くて白い指が黒髪の間をスルスルと通っていく。何度か繰り返して満足したのか、指が離れていった。

「触らせてくれてありがとう。凄くサラサラね。やっぱりエルザはもっと自信を持つべきよ」
「うんそうする。凄く励みになったよ。ありがとうエリナ。そうだ、お母様がスコーンを持たせて下さったんだけど、天気も良いしここで座って食べる?」
「ええ、そうしましょう」

川に向かって、ジョジョ、エリナ、私の順にすわる。スコーンを口に運びながら、キャイキャイとエリナとの会話を楽しんでいると、ずっと黙って私達の会話を聞いていたジョジョが口を開いた。

「二人が仲良くなってくれたみたいで良かったよ。僕はそろそろ帰るから二人はゆっくり話すと良いよ。じゃあね、スコーン御馳走様」
「え、ジョジョ、ちょっと」

サササッと駆け足で帰って行ってしまったジョナサンの背中をエリナと二人で呆然と見送るしかなかった。

「何だアイツ」
「ジョナサンずっと私達を引き合わせたかったみたいなの」
「へー。それってそんなに喜ぶこと?…あぁ、もちろんエリナみたいな可愛らしい女の子と仲良くなれたことはもちろん喜ぶべきこどだけど、でもジョジョがそんなに喜ぶ理由が分からないんだよね」
「エルザの友達が少ないって気にしてたから、かな?」
「お節介だな。エリナは迷惑じゃあなかったの?」
「もちろん大丈夫よ。迷惑なんかじゃあないわ。私もエルザと友達になれて嬉しいもの」

ニッコリと笑いかけてくれるエリナに思わず見とれてしまう。ああ、本気で惚れそうだ。エリナマジ天使!と大声で叫んでしまえたら楽なのに。

「エルザ?」
「ああ、いや、何でもない。ゴメンね、エリナがあんまりにも可愛らしい笑顔を見せてくれたものだから見とれてちゃったよ」
「エルザは本当にお世辞が上手ね」
「んっんー。本当の事なんだがなぁ。………気持ち悪かったりしたらごめん」
「気持ち悪いだなんてそんな、思ったりしないわ。絶対よ。とても嬉しいわ」
「そっか。素のまま女の子と話してるとどうしても、こう…口説き文句を言っちゃうんだよね」
「うふふふ。エルザの性格がよく分かってきたわ」
「ホントに?これからも是非仲良くしてくれると嬉しいんだけどな」
「私の方こそ、よろしくお願いします」

お互いに向かい合って頭を下げ、同時に上げて、顔を見合わせてクスクスと笑いあう。青春っぽい!
女の子同士というのはよーく喋るものだとよく思う。ジョナサンやディオとも喋るが全く違う。何故これほどまで喋ることがあるのかと自分でも不思議だ。

「もうそろそろ日が暮れちゃうから帰ろうか。女の子が一人で帰るのには少し危ないからね」
「そうね。また今度遊んでくれる?」
「もちろん。いくらでも誘ってほしいな」
「ありがとう。今日は凄く楽しかったわ。またね」
「うん。気をつけてね」

バイバーイと手を振って、お別れする。エリナの家は反対方向だ。一人で大丈夫かな…。さて、課題が増えたぞ。すっかり忘れていたが、エリナと言えばディオとのズキュウウウンだ。あれからは守ってあげないと。ディオをぶん殴ってでも、本性がバレてでも阻止しなければならない。でもいつのことだったか分からない…。確かジョナサンと遊んで別れてからだったような…。二人をつけ回すのも嫌だしなー邪魔したくないし。

『じゃあディオ君にべったりしてたらいいんじゃない?』

禊さんの助言になるほど、その手があったか。と納得する。確かにアイツの側にいれば阻止できる可能性があがりそうだ。うん。そうしよう。あまりディオとは関わりたくないと何度も言ってはいるがエリナのためだ、背に腹は代えられん。そうなるとディオへの好感度稼ぎが大事になってくるな…今アイツ私をどう認識してるんだろ。



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