エルザ | ナノ


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目を開けると見知らぬ天井が目に入った。起き上がってみると明らかに身体が縮んでいる。幼児期からのスタート、というところか。にしても、この服装は何なんだ一体。ネグリジェ…かな?しかも下着はドロワーズだし、いつの時代だよまったく。って、あー、この時代が私の生きていた時代とは限らないのか。じゃあこーゆー恰好が流行っていた時代ってのも視野に入れておくか。ベッドもふかふか、部屋も広くて家具も高そう、着ている服も質が良い、なかなかの家に生まれたみたいで一先ずホッと息をつく。これからどう生きていこうかなー。そういえば安心院さんはサプライズもあるって言ってたけど、何だろな。

『僕だよ』
「は!?」

振り返ると恩人である球磨川禊が浮いていた。最後に会ったままの若さで、黒い学ランを着ている。

「何で安心院さんといい禊さんといい後ろから話しかけるんです?ぶん殴りますよ?」
『ハハハ、やってごらんよ、当たらないぜ』
「禊さん今の私がかわいい幼女だからって舐めてると痛い目見ますよ」

言い終わると同時に殴り掛かると当たるはずの拳がすり抜けた。驚いて禊さんの顔を見ると平気そうにニコニコと笑っている。

「ゆ、幽霊、とか?まさか化けて出てきたなーんて言わないですよねー?」
『サプライズだよ』
「ん?安心院さんの言ってたやつですか?それで何で禊さんなんです?というか、何でそれ知ってるんです?」
『質問ばっかりだね。うーんとね、僕は君のスタンド的立ち位置なんだ』
「はぁ?スタンド?スタンドって、え、ジョジョのアレですか?」
『うん』
「じゃあ、ここってジョジョの世界?」
『そのとおり』
「…幸せになる前に死亡フラグしかないんですがそれは」
『そのための僕だよ』
「まさか、私のスタンド能力、虚数大嘘憑き(ノンフィクション)とか言いませんよね?」
『せいかーい』
「私自身の能力もあるのにさらにスタンドとかどんなチートなんですか。」
『でもエルザちゃんの能力戦闘向きじゃないしへっぽこだし、前はそれを補って余りあるぐらいエルザちゃん本人の戦闘能力が高かったから良かったけど今は幼女だし丁度良いんじゃない?』
「ぐっ…。ま、まあ確かにそうですけど。禊さんは良いんですか?」
『楽しそうだしね』
「はあ、まあ良いなら良いんですけどね」
『うん。これからよろしくね』
「…なんだかなぁ」

話がまとまった(?)ところでノックが聞こえた。え、ってか私この世界でどう振る舞えば良いんだ?

『ちなみにこの家は貴族の家系だよ、エルザちゃんはそこの一人娘』
「えー。なんだそりゃ、めんどくせー」

どうしたもんかと考えてるともう一度ノックが鳴る。あーそうだ、開けないと。この世界での私のことは気にしないことにしよう。

「はいはーいっと」
「エルザ様、おはようございます。扉を開けて下さりありがとうございます。お着替えをいたしましょうか」
「え、あ、はい」

扉の向こうにいたのはいかにもおばあちゃんな人だった。流石貴族、お着替えをするのも一人ではないのか。おばあちゃんに任せているとあっと言う間に着替えが終わった。ジョジョが関わる時代でこんな服装ってことはやっぱり一部か…たしか1880年とかだったかな?主人公が何歳かによるな。

「ありがとう」
「いえいえ、とんでもございません。それにしても今日はお出掛け日和で良かったですね」
「え、今日どこかに行く予定…だった?」
「今日はジョースター家にお邪魔しに行く日ですよエルザ様」

マジかよ。よりによって来たばっかりでこんなイベントとかありえねーよ。話も合わせにくいし良いこと無しだな。とりあえず笑っとけ、もうどうにでもなれ。

「あ、あー。今日だったね、うんそうだね。アハハハ」
「エルザ様?体調が優れないのですか?」
「え?いやいやいや、大丈夫、大丈夫だよ」
「もしかして緊張していらっしゃるのですか?」
「あー、うん。少し、ね」
「ご安心下さいエルザ様。ジョースター家にはエルザ様と同い年のご子息がいらっしゃるそうですからすぐに仲良くなれますよ」
「そうなんだ。ありがとう、私頑張るよ」
「エルザ様が元気になって下さってなによりです。さぁ、ご両親がお待ちですよ、行きましょうか」

次は両親か…まだこのおばあちゃんの名前すら分かってないのに両親に会ってボロが出ないか心配だ。ってか同い年のジョースター家の息子ってこれジョナサンじゃね?ってかジョナサン以外あり得なくね?自分でやっておいてアレだがこの口調ウザすぎるな、止めよう。とりあえず対両親としては貴族っぽく喋るしかないな。もし普通に話して怒られるのもヤだし。

「旦那様、奥様、エルザ様をお連れいたしました」
「おはようございます。お父様、お母様、お待たせ致しました」

おー。前世では親なんていないも同然だったし、お父さんお母さんなーんて初めて言ったわ。貴族で、美人とイケメンの夫婦で、一人娘は私レベルの美幼女とかこの家族ヤバいな。

『自分で美幼女とか言う幼女はいないぜエルザちゃん。おっと、返事はいらないぜ、今喋ったらエルザちゃんは変人扱いされちゃうからね。僕は君のスタンドなんだ、考えてることは分かるよ。あぁ、大丈夫、プライベートなことはスルーするからね』

最悪じゃあねぇかあああぁぁぁぁぁ。絶対幸せになれるはずないだろこれ。思わず禊さんをガン見しているとお母様()に声をかけられた。

「エルザちゃん、どうしたの?どこを見ているの?」
「え、な、何でもありませんよお母様」

ニッコリと笑いながら答えつつ、心の中で禊さん覚えてろよと唱える。これも聞こえているのか禊さんはクスクスと笑いながら消えていった。流石スタンド。

「さあ、準備ができたのならもう出発するぞ」

外へ出ると一台の馬車が止まっていた。馬車移動かよ、馬は可愛いけど酔うな、確実に。気分が悪くなると分かっていて乗るのは嫌だけど仕方ない。何とかなる





そう思っていた時期が私にもありました。ええ、五分前までは。ダメだ…気持ち悪い……吐きそうだ。





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