エルザ | ナノ


▼ ぷろろーぐ

私は母に殺された。いや、母親と呼べるほど彼女はその責任を果たしていたと言えないし、母の愛、なんてものもなかった(あれば虐待などしない)。虐待が発覚し、施設に保護された時点から一度も会っていなかった。中学で出会った恩師と一緒に高校でやんちゃしたり、公正したりしつつ過ごし、大学も卒業し、働き始め、ある日信号待ちをしていたら後ろから突然押され、道路へと突き飛ばされた。クラクションが鳴り響くなか、振り返った先に見たものは、ほぼ記憶に残ってはいなかったが、確かに母だった。老けてはいたが、直感、というか、本能のようなものが、彼女が私の母であると告げていた。最後に私が見たのは母の何かに怯えたような顔だった。














目を覚ますと教室にいた。ここは…昔聞いた死後に来るという場所か?やっぱり私は死んだのか…。それにしても、この部屋の主の姿がないのが気になる。あの人、いや、あの人外は私より先に死んでしまったし当然かもしれないけれど、でもあの人外が本当に死んだとは思えないしな…。一応キョロキョロと見渡すが…。

「いないよなー」
「誰を探しているのかな?」
「うわ!?」

突然話しかけられ振り返ると探していた人外がいた。相変わらず可愛いな。

「こんにちは安心院さん。死んだんじゃあなかったんですか?」
「生きてるぜ、ご覧の通りね」
「相変わらず可愛いですね」
「君も相変わらず不幸みたいだね、とうの昔に縁が切れたと思っていた母親に殺された気分はどうだい?」
「さぁ?あんまり何とも思わないですね。死んだ実感すらないですし。これから私はどうなるんです?生き返らせてもらえるんですか?」
「生き返らせて欲しいかい?」
「いやー、もういいです」
「おや、意外だね」
「だって何かもう、飽きちゃったんですもん。殺されて、あぁ、もういいやって思ったんです」
「そっか。じゃあ転生とかどうだい?」
「はい?」
「新しく生きるんだよ。君には幸せになってほしいからね」
「はぁ」
「嫌かい?」
「うーん。どうでもいいです。安心院さんにお任せしますよ」
「じゃあ行ってみようか。大丈夫、何かあれば手助けするよ」
「ありがとうございます」
「出口は前の扉だぜ。あ、それと、大人になって失われた君の能力は復活してるから、また可愛い虫ちゃん達と遊べるぜ、良かったね」
「うっわ!マジかよ安心院さんマジで最高!ホントにありがとうございます来世もなんとか生きていけそうです!」
「テンション上がりすぎだぜエルザちゃん」
「いやーすいません。でも私の人生で何が一番悲しかったかというと能力を失ってあの子達と会話出来なくなったことなんですよ」
「嬉しいのはよーく分かっからさ、ほら、行ってきてごらんよ、サプライズも用意してるからね」
「向こうでは何歳くらいから始まるんです?」
「さぁ?エルザちゃんの自我が芽生えたら、かな」
「なるほど」
「どうなるかは君次第だから、君の好きなように過ごすと良い」
「はーい。とりあえず行ってきまーす」
「うん。また会おうね。」

ガラガラと教室の引き戸を開けて外に出る。正直人生二回目をやり直すのはクッッッソ面倒くさいけど私だって幸せになってみたい。目を閉じて、次に開くときは新しい世界だ。


幸せを求めて




prev /back/ next



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -