[生きることを諦めたい夜はただ君の傍で眠りにつきたい](ユキアカ)





複雑に入り組んだ通路をいつもの通り最短で通り抜け、屋上に上がる。
昼には抜けるような青空が広がっていたそこには、深海を思わせる夜が無数の小さな光たちを従えて黒々としたその姿を見せていた。
見慣れた景色、何の代わり映えもしない景色。

「寒いなぁ」

ふと声を出してみる。吹きさらしの風に負けた声はあっけなく飛んでいってしまった。そんなもんか、と俺は思い、屋上の真ん中辺に置いてあるベンチに座る。
薄いパジャマの生地越しに優しく固いプラスチックが触れる。つめたっともう一段階寒さに大きく震えると、はぁと反射的に息が出た。

「……あかやー」

深夜2時。絶対に誰も居ない屋上だけで俺は胸に溜まった言葉を吐き出す。

「赤也に会いたい」
「でも会ったって赤也が気遣うから会えない」
「赤也は俺に会いたくないだろうしなー」





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