[背中を追い駆けるからには相応の](89→37/2年生時)





また今年も夏がやってきた。
昨年全国制覇を成し遂げた立海大附属中男子テニス部は、来たる県大会ならびに関東大会に備え、公式戦に出場するレギュラーメンバーを決定しつつあった。
試合成立に必要な7名に補欠3名を加えた10枠を総勢200名近くの部員が争う選抜戦は、圧倒的な実力差を見せつけた幸村・真田・柳が早々に内定を決めていた。それに部長・副部長が続き、大方の予想通り半分の5枠を奪い合う展開となった。
常勝校ならではの実力主義と伝統校ならではの上下関係が絶妙に入り混じる中、何故か勝ち進んでいた仁王と打倒三強に燃える切原の2人がほぼレギュラー入りを確定させたところで、部内の緊張感は最高潮に達した。
残りは3枠だが、シングルスプレイヤーの多い立海では貴重なダブルスペアである丸井とジャッカルが入るという暗黙の空気が漂っていた為、実質1枠しか残されてはいなかったからである。
ここで最後の席へ滑り込まなければ、県大会・関東大会そして全国大会へ出場する道は絶たれる。中学生活最後の名誉を得らんがために鬼気迫っている3年生の気迫に、1・2年生の怯えと諦めが合わさり、何とも形容のし難い空気がテニス部には流れていた。

そんな中、瀬戸際ながらも勝ち続けていた2年生が居たことを知っていた者は、レギュラーメンバーを発表する前日まで皆無だった。
柳生比呂士。小学校へ上がる前からテニスを始めていた者がほとんどだった立海において、中学入学から始めたとされる柳生の存在は完全にノーマークであり、それだけに最終日まで勝っていたという事実は部内の空気を一変させた。
驚愕と共に焦りを見せ始めた最上級生。別格の強さを誇る三強を除いても、レギュラー陣の半分以上は同学年生になることに気付き、色めき出す1・2年生。
それに常勝を課せられた学校ならではの外部的な重圧も加わり、毎年であればレギュラーメンバーを決めるだけの選抜戦は、いつしか3年生と1・2年生の代理戦争と化していた。

「頑張れよ柳生!」
「お前が入ればほぼ全員2年で全国だぜ!?」
「この立海のOBでもなったことねぇだろ!」
「は……はぁ…。」





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