なぁ、と酒に嗄れた声で仁王が真田を見上げる。
「どないしたら参謀が嫉妬するち思う…?」
テーブルの上にだらしなく顔を乗せ、横を向いたまま空になった缶を小さく回す。
短く知らんと答えた真田はコップの中に角の取れたロックアイスを入れ、焼酎をそのまま注ぐ。
「何故嫉妬させる必要がある。」
「じゃって自由にされたんらかえって不安になるんじゃもん。」
がっちがちに拘束された方が安心出来るんじゃ。普段聞き覚えの無い仁王の甘ったるい声を聞きながら、知るかと再度心の中で真田は呟く。
喉が焼ける様な感覚がして、ガラスと氷がぶつかった。からりと涼し気な音がして、真田は仁王の横に並べてある瓶を手に取る。
「蓮二を嫉妬させたところでどうなる。」
「俺が満足する。」
「……それだけか。」
「それだけよ?」
下らんと吐き捨て、ハンドボトルの瓶の蓋を捻る。そしてさっきまで飲んでいたコップに瓶の中身を入れると、どうやら炭酸だったらしく独特の酸素が弾ける音がした。
炭酸が苦手な真田は近くにあったマドラーで氷と飲み物を何とか中和させようとひたすらかき混ぜる。仁王はほとんど閉じてしまいそうな瞳のまま壁の方を向いている。
「お前が蓮二を好きで、蓮二がお前を好きなら、それで充分だろう。他に何が要るんだ?」
「好きやし蓮二も俺んこと好いとうじゃろうけどー、でも、分からんやん。」
「何が。」
「蓮二が俺んこと好きかどうか。」
「はぁ?」
「人間て何考えとうか分からんじゃろ。心で思うてないことやって平気で言ゆうが。」
だから分からないとその独特な方言で呟き、仁王は缶をくるりと回す。バランスが乱れた缶は軽い音をぬるい空気ににじませてから横たわった。
一方銀髪の主の普段の言動を思い浮かべ、真田は溜息の代わりに一口酒を飲む。
「自業自得だ。」
「あ?」
「いつものお前の行為がその身に返ってきているだけだ。少しは自省してみろ。」
「んー……俺は思うとることしか言わんよ。思わんことは頭に浮かばん。」
「馬鹿らしい。」
一蹴し、後々来た炭酸の感覚に真田は眉をしかめる。
「てかさっきからお前さん飲み過ぎじゃろーが。」
「貴様に言われる筋合いは無い。」
「俺の選んだ酒まで飲みよって…めんどくさい奴よのー。」





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