No nameたちは出かける用事ができたので沙織も出ることとなった。多少、心配はしたが本人が向き合う覚悟を決めたようだったので特に何も言わずに送り出した。
沙織と別れNo nameたちは電話をかけてきた人のもとへと向かった。――東湖畔。そこは彼の店だ。久保田が店主――鵠と話をしている間No nameと時任は外で待っていた。
「…ねえ。時任。」
「あ?No nameどうかしたか。」
「どうかしたって言うか…いい加減、お店の中入ろうよ。鵠さん悪い人じゃないんだし…。」
「ぜってーいや。なにがなんでもいや。」
「もう。」
その時、中から話し声が聞こえてきた。
――入ってくればいいのにね。――仕方ないですよ。知り合いに獣医も動物ン見嫌われて哀しがっていましたし。――
「俺を犬猫と一緒にすんな!」
「今のままじゃ犬猫と変わらないよ…。」
「その後、体調と――右手の様子はどうです?」
「別に。何もかわんねーよ。平気だよ。」
時任は心配されることに慣れていないのかぶっきらぼうに答える。No nameはそんな時任をほほえましく見ていた。
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