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 「落ち着いたね。」

 No nameのその言葉が本題への口火を切る。

 「起きたばっかりなのにごめんね?」

 久保田は口をはさむ気がないのかそういうと沙織から離れていく。
 No nameは周りを確認してから沙織へ言葉をかけていく。

 「沙織。今から言うことは事実よ。受け止めてね。…W.Aというドラッグが出回っているの。」

 「出所も不明…効能どころか、サンプルさえ警察の手にも入らねえ。ただ1つ分かっているのがそいつを常用した人間はなぜか体毛が伸び牙や爪が発達…。」

 「――獣化…ともいえるわ。時任の右手…あなたの彼氏さんのようになるの。死因は内臓破裂。」

 容赦なく、現実を突きつける。葛西がどれだけ言葉を濁そうがNo nameは逃げることを許さなかった。

 「今まで死体しかサンプルが上がってねえからな。なぜ死ぬのか、常用した者全てが死に至るのか定かじゃない。」


 No nameと葛西の言葉に沙織はただただ驚くばかりで何も答えない。情報の処理が追いついていないのかもしれないが。


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