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 宿に戻ると三蔵一行が来ているという話は村中に駆け回った。それもう、元から騒いでいたためにとてつもない速さで。

 「ねえ、どうするの?町はお祝いする気で盛り上がっているよ?」

 「どうするも、こうするもねえよ。すぐに街を出る。長居は無用だ。」

 「断り、切れる?」

 「何が言いたい。どちらにせよ俺たちは先を急いでいる身。何を言われようとここにとどまる理由にはない。」

 三蔵の言葉にNo nameはその通りだと思う反面、断り切れるとも思えなかった。なんやかんやでこの人は優しい。No nameが旅に加わるときもそうだ。足手まといなのは分かりきっていた。男の中に女が1人という状況が面倒なことこの上ないこともわかっていた。それなのに、結局は連れて行ってくれている。

 No nameが気にしているのは、小さな女の子。聖華だ。きっと三蔵も八戒も悟浄もあの子にお願いされてしまえば断れないだろう。何より今回のことであの子は私たちに恩を感じると同時に疑ってしまったことへの罪悪感を持っていることが分かったからだ。


 あした、何も起こらなければいいのだけれど。私には妖力がどんなものかわからない。でも、嫌な予感がする。
 お守りが…何かを伝えるかのように反応している気がする。でも、聖華の願いを切ることはできない。私も、気持ちがわからないわけではないから。

 No nameの心は穏やかでないまま夜は更けていった。




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