「―――っ。ここ、は」

 「あ、気が付きました?」

 「だれ!?」

 No nameが目を覚ますと目の前には知らない男たちがいた。否。知っている。夢で見た男たちだ。彼らはなぜ自分の目の前にいるのか。今まで桜の木の下で法術の練習をしていたはずだ。
 そこまで、考えてNo nameは気づく。もしかしたらここは、『向こうの世界』ではないかと。自分が人生のほとんどを過ごした世界。14まで生きていた世界。“帰ってこれた”そう思った。
 そう、峯明たちと暮らした自分が愛する世界へと。みんな元気なのだろうか。三蔵になれたのか。思うところはたくさんある。しかし、自分の感覚で4年。こちらではどのくらいの年月がたっているのだろうか。

 ――いや、もしかしたらいつもの夢かもしれない。

 「――のう?あのー?大丈夫ですか?どこか痛みますか?」

 「え?――ああ、大丈夫です。あの、どうしてここにいるのか聞いても?」

 「ああ。湖から出てきたんですよ。」

 「へ?」

 「強い風が吹いたと思ったら、湖から出てきたんです。――あなたは妖怪ですか?」

 「――え?」

 「見つけたぞ!三蔵一行!」

 そう、聞かれたときだった。遠くに現れた妖怪たちが一気に押し寄せてきた。妖怪はNo nameを拘束する。

 「玄奘三蔵!こいつの命が惜しければ経文を渡せ!」

 “三蔵”この妖怪はそう言わなかったか。それに、経文の存在。

 ガツンと鈍器で頭を殴られたような衝撃が走った。よく考えたら夢で会話をしたことがあっただろうか。しかも、爽やかな印象の男は妖怪かと聞いた。妖怪は目の前にいる。痛みもある。夢じゃない。そう感じた。





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