「大変申し訳ございませんでした……」
事情を聞いたシシーは、四人の前で頭を深々と下げながら言った。
「お兄様の助けてという声が聞こえてきたので、」
「いやいや、疑われるようなこっちが悪いっつーか……」
「お兄様ってだあれ?」
「俺!」
「お兄様がそう呼べとおっしゃいましたので」
「お前歳考えろよ……」
シシーの顔を見てカリーナは腕を組ながら眉をひそめた。
「あんた、どっかで……」
「お人形さんみたいねえ。かわいー」
「もう良いって良いって、頭あげろよ。なあ?」
「あ、ああ……俺は大丈夫だけどよ」
先程まで、自分よりも小柄な少女に組み伏せられていたキースは口を開けたままぼーっとしている。
「スカ――キース、どうした?」
「…………素晴らしい、そして素晴らしい!その小さな身体でわたしのような者を組み伏せるなんて!」
「使用人の嗜みでございますので」
キースはシシーの手を取ると力の限り握って振るった。あまりの力強さにシシーの身体が上下する。
「使用人……?」
カリーナは使用人という言葉に、ひっかかっていた記憶にシシーの姿を思い出したようだった。「あーー!!」カリーナはシシーに指差して大声を出した。
「この子よネイサン! 前言っていたメイド服の子!」
「「「「え!?」」」」
虎徹以外が声をあげて驚いた。
ネイサンがカリーナの脇を小突いてコソコソと話す。
「カリーナ、ほんっとうにこの子なの?」
「こんな子、見間違えるわけがないでしょう!」
「確かにこんな見た目じゃネ」
頭を垂れるシシーの長いプラチナブロンドを一度見たら忘れるわけがないと、腕組みをしながら言った。
虎徹はそんな二人を見ながら頭を掻いた。
「なんだ、その……バニーの使用人だそうだ」
「「ハンサムの!?」」
カリーナとネイサンの声が重なる。シシーははいと短く答えてその場で姿勢を正した。
「申し遅れました。私、ナルシッサ・ベネディクトと申します」
「――そのお辞儀の角度、手の添え方、完璧だ……しかし、メイド服ではない。なぜた!? そしてなぜなのだ!」
頭を抱えて唸るキースの言葉に、シシー以外の突き刺すような視線が痛い。
「メイド服は目立つので出かける時は着てはいけないと、バーナビー様から言われましたので」
「あいつの趣味じゃないんだな」
「メイド服の着用は婦長様からのお言いつけでしたので」
「メイド服……」
しょんぼりするキースを横目に、虎徹は四人を指差した。
「こいつらは、あれだな、バーナビーの友人だ」
「カリーナよ」
「ネイサンよ。よろしくね」
「アントニオだ」
「よろしく、キース・グッドマンだ。ナルシッサ君、良かったらメイドふ、」
「「却下よ」」
女の子組――もとい、カリーナとネイサンに止められ、キースはさらに落ち込む。
「そうだ、ナルシッサちゃんも一緒にサプライズしましょうヨ!」
「シシーで構いません、ネイサン様。サプライズとはいかがなものでしょうか?」
「こう、パーっと驚かせて誕生日を祝うんだよ!大勢で祝ってやった方があいつもきっと喜ぶしな!」
「そういうものなのでございますか」
「そういうものなのでございますよ!」
ウインクしながら言う虎徹に、関心した表情で頷くシシー。
「それでは、シシー君も入れて、もう一度練習しようではないか!」
「おー!」という掛け声をかけて五人は拳を上げる。シシーも真似をして同じように手をあげたのだった。