「っだー!青峰、てめえ邪魔だっつってんだろうが!」「あ?うちの従姉妹、誑かすような男に言われたかねえよ」ぎゃあぎゃあぎゃあ。両耳から否応なしに入ってくる騒音によって、眉間に皺が刻まれたのがわかった。ギラギラと照りつける容赦無い日差しの中、なぜこんな大男に挟まれて街に繰り出さねばならなかったのか。本来ならば今日は火神先輩…、現在進行形でお付き合いさせて頂いている大学の先輩とのデートのはずだった。それが、たまたま我が家に遊びに来た従兄の大輝くんと私を迎えに来た先輩は知り合いだったらしく、運悪く玄関で彼らは鉢合わせた。私が先輩とお付き合いしており、今日がデートだと言う事を私の母から聞いた瞬間、彼は眼光を鋭く尖らせ「俺も行く」などと言い出したのだ。なんてはた迷惑な従兄。昔からトラブルメーカーだとは思っていたが、自分に被害が及ぶとこんなにもイラッと来るのか。大輝くんの幼馴染である桃井先輩に尊敬の意を表します。「おい火神、知ってっか?従兄妹ってのは結婚できんだよ」「…だからなんだよ」「俺とななしは結婚できるっつってんだよ」「あぁ?!」「ちょっと、大輝くんも先輩も…ここ、公道だよ?わかってる?」すれ違う人々の視線が痛い。前述のとおり、私の両脇には190センチを超える大男がいる。両手に花というか、両手に大木だ。これは主観的な感想だが、客観的に見りゃ、囚われた宇宙人。それが1番しっくり来る表現だろう。「もうね、大輝くんもついて来るならついて来ていいよ」「ななし?!」「ななし…お前…」「でもね、私と火神先輩の仲を裂こうなんてこと、絶対にしないでよね!」ぎゅっと先輩の腕を握り、大輝くんを睨み上げる。視界に捉えた彼は若干泣きそうな顔をしている。逆に、腕を捉えた彼からは感嘆の溜息。「お、俺は、お前らの仲を認めた訳じゃねえぞ」「認めたら楽になんぞ、お義兄さん」「おい、こら、火神てめえ…」セミの鳴き声にも負けずとも劣らない彼らの応酬が止むことはあるのだろうか。目の前がくらり傾いた気がした。


くらくらりん
120801/野乃様リクエスト
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -