ミンミン、と外では蝉がうるさいくらいに鳴いていて世間では本格的に夏休みが始まろうとしている。高校一年生の夏休みなんて、期待で胸がいっぱいなはずなのにわたしはというとプールにいるわけでも、海にいるわけでもなく、学校にいる。教室にはわたしと先生しかおらず、先生ははぁ、と浅いため息を吐いた。

「あんなに簡単なテストにしたのに、お前だけだぞ、落としたの」

そう、わたしは英語の補習のために学校にいるのだった。あと二問、二問さえあってれば赤点は免れたはずなのに、とわたしの目の前にあるアルファベットが羅列されたプリントを睨む。じゃあそれやったら職員室に出してけよ〜なんて手をひらひらさせて先生は教室を後にする。え、ちょっと、わたし英語わかんないのに!!!先生はクーラーの効いた職員室で優雅にお茶でするんだろうか、ずるすぎる。そしてわたしはこのプリントを終えるのに何時間この教室で過ごさなければいけないのだろうか。

「あれ、 名無じゃん、」

教室のドアがガラッと開いて、声をする方に目を向けると同じクラスの火神がいて、彼はつか暑っ!この教室、と言いながら流れる汗を首にかけてあるタオルで拭った。彼は教室に入り、わたしの前の席に腰掛ける。

「え、なにお前、もしかして補習?」
「ウルサイ、見ればわかるデショー」
「あんな簡単なテスト落とすとか、お前ってやっぱ、期待裏切らねぇのな」
「なんで火神は出来て、わたしは出来ないの」
「まあ俺はアメリカにいたしな、お前とは次元が違うわけよ」

なんて笑いながら言う火神になんで学校にいるのか、と尋ねるとはぁ?見りゃわかんだろ、部活だよ、と頭を軽く叩かれた。

「え、部活いいの?戻らなくて、」
「 あー …もうちょいしたら戻る、ちょっと休憩」
「そんな自由でいいのかバスケ部」
「せっかくプリント手伝ってやろうと思ったのに」
「お願いします!!!!」

お前ほんとおもしれーな、と火神言ってプリントに目を向ける。さっきまで全くわからなかった問題が火神の解説でみるみるうちに解けて、アルファベットの羅列にしか見えなかったのにちゃんと文章として読める。真っ白だったプリントも火神の教えによってみるみる内に埋まっていく。

「あとこれくらいなら自分で出来そう、ありがとう火神!」
「おーそりゃよかった」
「せっかくの夏休み、とっとと補習なんて終わらなきゃ」
「 、でも俺はお前が補習でよかったわ」

え?なんで?、と言うと火神はじっとわたしを見つめて、黙る。彼の取り巻く空気がさっきより少し変わったような気がして、 わたしも彼の方を見るとぶつかる、視線。


「俺さ、今日誕生日なんだわ」

「夏休みだし、 会えるわけないって思ってたけど、教室見たらお前がいてさ、」

「だから、なんつーか、今日名無に会えてよかった」

なんて、今まで見たことないような顔で笑うから、 え、それって、顔が熱くなるのがわかる。その反応は、少しは期待していいって、ことだよな?心臓がうるさくて、ああこの音が火神に聞こえてませんように、なんて 。

「火神って、こんなストレートだっけ、?」
「ああ、好きな奴には特別な」

とさらって言ってのけるからまた顔が熱くなって、きっと今顔真っ赤なんだろうな、でもそれはこの暑さのせい、と自分に言い聞かせる。目の前の火神を見るとそれは楽しそうに笑ってるからまあいいか、なんて。おめでとう、と告げると彼はまた嬉しそうに笑った。



(その熱帯びた視線で、わたにを焦がして)
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